定年後の仕事や再就職を探しに来た方に、最初に正直な話をさせてください。
私はこれまで、面接や採用説明会、セミナー登壇など、あらゆる場面で数多くの定年後の方と向き合ってきました。コールセンター・警備・マンション管理・清掃・派遣など、複数の職種の現場担当者とも連携してきた立場から言うと、「おすすめ職種〇選」より先に知っておいてほしいことがあります。採用する側が何を見ているか。なぜ落ちるのか。体力はどこまで持つのか。そして、お金や資格より大切なことは何か。求人サイトには書けない本音を、このガイドにすべて詰め込みました。
このガイドで得られること
最新の公的統計データ 02 採用で落ちる人の共通点
採用担当の本音 03 体力と仕事のリアル
現場で見てきた一次情報 04 職種別おすすめ度
採用側の正直な評価 05 長く続く人の本質
お金・資格より大切なこと
採用の本音だけ先に読みたい方はこちら
▼ 採用担当の本音パートへジャンプ定年後、実際どれくらいの人が働いているのか【最新データ】
「定年後も働くのが当たり前になった」とよく言われます。では実態はどうか。総務省統計局の最新データで確認します。
65歳以上の就業率は25.7%、過去最高を更新
総務省統計局「労働力調査」(2024年・統計トピックスNo.146)によると、65歳以上全体の就業率は25.7%(前年比+0.5ポイント)で過去最高を更新しました。就業者数は930万人で、就業者総数に占める割合は13.7%。日本で働く人のおよそ7人に1人が65歳以上という計算です。
年齢別に見ると、実態がより鮮明になります。
| 年齢層 | 就業率 | イメージ |
|---|---|---|
| 65〜69歳 | 53.6% | 約2人に1人が働いている |
| 70〜74歳 | 35.1% | 約3人に1人が働いている |
| 75歳以上 | 12.0% | 約8人に1人が働いている |
出典:総務省統計局 統計トピックスNo.146(2025年9月)
出典:総務省統計局 統計トピックスNo.146(2024年データ)。65〜69歳は2人に1人、70〜74歳は3人に1人が就業中。
65〜69歳では半数以上が働いています。一方で70歳を超えると3人に2人は働いていない。「定年後はみんな働いている」という空気感は、少し実態と違います。
雇用形態の現実:60代を境に「非正規」が急増する
同じく総務省の調査では、65歳以上の役員を除く雇用者のうち非正規が76.9%、うちパート・アルバイトが52.9%(298万人)を占めます。
特に男性の変化が顕著です。55〜59歳では非正規比率が10.3%ですが、60〜64歳で41.3%、65〜69歳では67.8%に跳ね上がります。女性は55〜59歳58.1%→60〜64歳72.6%→65〜69歳83.2%と、もともと高い非正規比率がさらに上がります。
「60代 パート」「60代 女性 仕事」で検索している方の多くが感じている通り、定年後の仕事の主流はパート・アルバイトや契約社員です。これは現実として受け入れたうえで、どう働くかを考えることが大切です。
「働いていない人」も当然いる(働く・働かないは選べる)
内閣府「令和7年版高齢社会白書」によると、収入のある仕事をしている60歳以上の約3割が「働けるうちはいつまでも」働きたいと回答し、「70歳くらいまでまたはそれ以上」を合計すると約8割が高い就業意欲を持っています。
一方で、同白書では経済的な暮らし向きに心配がないと感じる60歳以上が65.9%というデータもあります。世帯主65歳以上の世帯の貯蓄現在高の中央値は全世帯の約1.4倍。つまり「働かなくても暮らせる状況の人」も相当数います。
「本当はもう働きたくない」と感じている方がこのページを読んでいるとしたら、それは弱さではありません。働く必要がある人・働きたい人・働かなくてもいい人、それぞれの立場に合った選択をすることが、定年後の仕事を考える出発点です。
なぜ今、これだけ多くの人が定年後も働くのか
定年後に働く人がこれほど増えた背景には、3つの大きな流れがあります。データで順番に見ていきます。
1つ目は年金だけでは不安という現実です。内閣府の白書では、経済的な暮らし向きに心配がないと感じる60歳以上は65.9%。裏を返せば、3人に1人以上は何らかの経済的な不安を抱えています。年金の受給開始年齢の引き上げや、受給額への不安が、働く選択を後押ししています。
2つ目は物価の上昇です。食料品や光熱費が上がり続けるなか、年金収入だけで以前と同じ生活を維持するのが難しくなっています。「少しでも収入の柱を増やしておきたい」という防衛的な働き方を選ぶ方が、確実に増えています。
3つ目は健康寿命が延びたことです。多くの方が60代・70代でも元気に体を動かせるようになりました。「まだ働ける」「家にいても手持ち無沙汰」という体力的・精神的な余力が、就業意欲につながっています。高年齢者雇用安定法で65歳までの雇用確保が企業に義務付けられ、70歳までの就業確保も努力義務となったことで、働ける環境そのものが整ってきたことも大きな後押しです。
つまり、定年後に働くのは「お金がないから仕方なく」だけではありません。不安への備え・物価への対応・健康な体と意欲。この3つが重なって、定年後も働くことが当たり前の選択肢になってきたのです。
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【採用担当の本音】定年後に「採用で落ちる人」の共通点
ここからが、求人サイトには書けない話です。採用の現場で数多くの求職者と向き合ってきた経験から、採用で落ちる人・受かる人の違いを正直にお伝えします。
先に言っておくと、定年後の採用で「スキルや経験が足りなくて落とした」ケースは、思っているより少ないです。落ちる理由の大半は、もっと別のところにあります。
①「これまでのキャリアや実績」を前面に出しすぎる
定年後の求職者に多いのが、これまでのキャリアや立場を自慢げに話すタイプです。「前職では部長として〇〇を担当していました」「〇〇業界で30年の経験があります」という語り口です。
採用担当として正直に言います。関連する職種への転職ならその経験は評価されるかもしれません。しかし、シニア雇用の多くは異業種への転職です。コールセンターに来る方の前職が製造業だったり、マンション管理に来る方の前職が営業職だったりする。そこに「前職の実績」を持ち込まれても、採用担当には判断のしようがありません。
さらに言えば、定年後の雇用の多くは有期雇用・パート・アルバイトです。正社員雇用ではないということは、大きな職務や責任を任せる前提で採用していないということでもあります。採用担当が見ているのは、経験や実績より「うちの職場に馴染めるか」「今いるスタッフと摩擦なくやれるか」「どれくらい続けられるか」です。ストレートに言うと、いくら能力が高くてもプライドが高く扱いにくい人は積極的に採用する必要がないのです。
採用で落ちやすいパターン
- 前職の肩書きや部下の人数を早い段階で話す
- 「これだけの経験があるので即戦力になれます」と押し出す
- 前職のやり方と比較して「前はこうだった」と言う
- 業種の関連性を確認せずに経験をアピールする
②スケジュール・勤怠の管理が曖昧
採用の現場で、もう1つよく見るのが勤怠・スケジュール管理が曖昧な方です。
介護や通院など、定年後の方が休む事情があることは理解しています。それ自体は採用のマイナスにはなりません。問題は「どれくらい休む可能性があるか」を自分で把握できていない場合です。「月に何回通院があって、そのうち何回は早退が必要で」と具体的に説明できる方は採用しやすい。「なんとかなると思います」という曖昧な答えが返ってくる方は、採用後にお互い悲しい思いをすることになります。
採用担当は意地悪で聞いているのではありません。一緒に働くスタッフのシフトを組む責任があるから聞いています。計画性を持って働ける方かどうかを見ているのです。
③面接の場での「態度」が出てしまう
これが一番正直に言いにくいことですが、最も多い落選理由の一つです。
椅子への座り方、話し方、相槌の打ち方。ところどころ敬語が崩れる、ため口になる、「うんうん」「はいはい」と繰り返す。些細なことに見えますが、採用担当にはしっかり見えています。年下の面接官に対して、無意識に上から目線になっている方は、現場に出たときも、その姿勢は表れやすいものです。
私の経験では、面接の場だけでなく、面接予約の電話の時点でわかることもあります。電話口での話し方、質問の仕方、確認の取り方。どの立場でこの会社に来ているかが、電話の数分で伝わってきます。
面接で採用担当が気にしているポイント
- 敬語が途中で崩れていないか
- 「うんうん」「はいはい」など目上の人に使うべきでない相槌
- 椅子の座り方・姿勢・視線
- 面接予約の電話での言葉遣い
- 年下・異性の面接官への敬意の有無
逆に「この人、受かるな」と感じる瞬間
スキルより「この人と働けるか」が先に判断される。採用の現場で繰り返し見てきたパターンです。
落ちる人の話をしたので、受かる人の話もします。
私が「この方は長く続きそうだ」と感じるのは、まず謙虚な人です。謙虚というのは卑屈になることではありません。今いるスタッフと同じ目線で仕事をしようとしている姿勢が自然に出ている方です。
次に、自分の状態を客観的に把握している方。「いくら稼ぎたくて、そのためには何日・何時間働く必要があって、体力的にはこれくらいが限界だと思っています」と具体的に話せる方は、採用担当に安心感を与えます。自己管理ができているということは、採用後のトラブルリスクが低いということです。
受かりやすい受け答えの例
「前職では〇〇の経験がありますが、こちらの仕事は初めてのことが多いと思っています。最初は教えていただきながら覚えていきたいと思っています」
「月に2回、通院があります。その日は〇時には上がらせていただきたいのですが、事前にシフトの調整をお願いすることは可能でしょうか」
「週3〜4日、1日5〜6時間が自分にとってちょうどいいペースだと感じています。それで長く続けていきたいと思っています」
体力は何歳まで持つのか(現場で見てきたリアル)
定年後の仕事を選ぶとき、「体力的にいつまで続けられるか」は誰もが気になることです。競合サイトの多くは「無理なく働ける職種を選びましょう」と書くだけです。私が現場で見てきた具体的な話をします。
「もっと働こう」とした瞬間に結果が落ちる
コールセンターでの経験から、印象的な傾向があります。普段週4で来ていた方が週5に変えたり、普通のシフトのうえに残業を重ねたりすると、数字(成果)が落ちるケースが多い。短時間勤務より長時間勤務のほうが、割合として結果が悪いのです。
これはおそらく、若いころと比べて集中力や体力の総量が変わっているからです。まれにフルタイムで抜群の実績を出し続ける方もいますが、そういう方には共通点があります。自分の限界を正確に把握していて、ブレーキをかけることができる。つまり、「これ以上やったら落ちる」という感覚を持っていて、そこで止められる方です。
「排気量の大きいエンジン」も燃料とメンテナンスが必要
若いころは「とにかく時間を使って、ガンガン働く」という方が多い世代です。しかし科学的に見ても、そういう働き方は長期的に見ると結果が出にくいことがわかっています。
私はよくこう話しています。どんなに排気量の大きい世界最高のスポーツカーも、燃料(食事)が粗悪だとその性能をフルに発揮できません。メンテナンスをせずに走り続けることもできません。人間の体も同じです。
質のいい睡眠をとっている、健康管理ができている、食事をきちんとしている。これができている方は、定年後も長く、高いパフォーマンスで働き続けています。体のメンテナンスを習慣にしているかどうかが、40代・50代ではあまり差が出なかったものが、60代・70代になると大きな差になって現れます。
現場で何度も見てきたパターン。長く高いパフォーマンスを出し続ける人は、「止まれる人」だった。
職種別・体力負荷の現実
「定年後に向いている仕事」を探すとき、体力負荷の観点から職種を整理しておくことが重要です。
| 職種 | 体力負荷 | 特徴 |
|---|---|---|
| コールセンター(受信) | 低〜中 | 座り仕事・声と集中力が必要・短時間勤務と相性◎ |
| マンション管理員 | 低〜中 | 立ち仕事あり・日常点検・人との関わりが多い |
| ビル・施設清掃 | 中 | 体を動かす・早朝シフトが多い・チームワーク重視 |
| 施設警備 | 中〜高 | 立哨・巡回あり・夜勤あり・体力の持続力が必要 |
| 交通誘導警備 | 高 | 屋外・立ち仕事・天候の影響を受ける |
| 介護・福祉補助 | 中〜高 | 腰への負担あり・人の役に立つ実感が強い |
| 配送・軽作業 | 中〜高 | 体を動かす・荷物の重さによって変わる |
| 事務・データ入力 | 低 | PCスキルが必要・求人数は少なめ |
体力と仕事の付き合い方・本音
「もっとできる」と感じているうちに少し手前でブレーキをかけられる人が、結果的に長く続きます。限界まで出し切る働き方は、若い人でも長続きしません。定年後はなおさらです。週3〜4日、1日5〜6時間という勤務スタイルが、多くの方にとって「ちょうどいい」ゾーンです。
定年後の仕事の選択肢【採用側の視点で整理】
ここからは職種の選択肢を整理します。私がこれまで、離職者・就業希望者・求職者・公共機関の担当者・派遣会社の担当者など、あらゆる立場の方と直接話してきた経験をもとに、主観的なおすすめ度をつけています。「公式のランキング」ではなく「採用と現場を知る人間の正直な評価」として読んでください。
なお「パソコンやスマホが苦手なので不安」という方も多いですが、職種によってITとの関わりは大きく変わります。警備・清掃・軽作業・配送補助は業務の主体が体を動かすことで、ITと直結しにくく、機械操作もハンディ端末のスキャンなど最低限にとどまります。逆にコールセンターや事務・データ入力は専用システムの操作が前提で、まったくPCに触れない状態では難しいのが実情です。マンション管理員も、給与明細のWEB確認や管理会社とのメール連絡など最低限の操作が必要な現場が増えています。ただ採用担当として見ているのは「苦手かどうか」より「苦手にどう向き合っているか」です。「苦手です」で終わらせず、「マウス操作と文字入力はできます」「今こんな練習をしています」と具体的に話せる方は、それだけで印象が変わります。
体力に頼らない仕事
コールセンター(受信・事務系)
おすすめ度:★★★★★
座り仕事で体力消耗が少なく、短時間勤務と相性がいい。シニア採用に積極的な企業が多く、未経験でも研修制度が整っているケースが多い。声と集中力が主な武器になるため、コミュニケーションが得意な方に向いています。時給は1,100〜1,400円が目安で、シニア向け職種の中では高めの水準です。一方できつい点は、クレーム対応や覚えるトーク内容の多さ。意外と最初の1〜2か月で「思ったより頭を使う」と感じる方は少なくありません。ただ、集中力を使う仕事だからこそ、長時間より短時間のほうが成果が安定して出やすい職種でもあります。難点としてはパソコンのスキルを求められることがほとんどです。
事務・データ入力・経理補助
おすすめ度:★★★☆☆
体力負荷は低いが、PCスキルと正確性が求められる。求人数がコールセンターより少なく、競争率が高い傾向があります。そもそも切り出しやすい簡単な業務はAIに仕事を奪われつつあります。ですのでほとんど求人を目にすることは少なくなりました。経理や総務の経験がある方は強みを活かせる職種ですので、マメにチェックしておくといい出会いがあるかもしれません。
コールセンター(発信)
おすすめ度:★★★☆☆
受信よりも精神的な負荷が高い場合がある。ノルマが設定されているケースもあるため、性格的な向き不向きがあります。成果給が上乗せされるケースも多く、頑張り次第で収入を増やせる面もあります。ただし、シンプルな業務が多く覚えることも少なくていい、パソコンなどの入力業務も少ない傾向にあります。接客業や営業経験者には馴染みやすい仕事です。意外かもしれませんが、クレームリスクは受信のほうが高く、発信の場合はクレームにつながる前に電話を切られます。
安定して長く働ける仕事
マンション管理員
おすすめ度:★★★★★
シニア採用の代表格。60代・70代が主力として活躍している職種で、採用担当者の間でも「シニアに向いている」という認識が定着しています。住民との日常的なコミュニケーションがあり、居場所感を持ちやすい。体力負荷は中程度で、長期就労が多い職種です。時給は1,000〜1,300円前後、住み込みや通勤型など働き方の選択肢も複数あります。向いているのは、人と挨拶を交わすのが苦にならず、毎日決まったルーティンをきちんとこなせる方。逆にきつい点を正直に挙げると、住民からのクレーム対応や、ゴミ出し・清掃など地味な実務が日々あること。「管理人=座っているだけ」という想像で入ると、ギャップを感じる方もいます。
施設警備員
おすすめ度:★★★★☆
商業施設・オフィスビル・病院など屋内での警備は体力負荷が比較的安定しています。60代の採用実績が多く、定年後のファーストキャリアとして選ぶ方も多い。夜勤があるケースは体力への影響を考慮する必要があります。
交通誘導警備員
おすすめ度:★★★☆☆
屋外・立ち仕事が中心で体力負荷は高め。ただし求人数が多く、採用のハードルが比較的低い。体力に自信がある方、動いて働くことが好きな方に向いています。
未経験から始めやすい仕事
ビル・施設清掃
おすすめ度:★★★★☆
未経験からでもすぐに始めやすく、女性シニアに人気が高い。早朝シフトが多いため生活リズムを整えやすい面もあります。チームで動くケースが多く、職場の人間関係が仕事の満足度に直結します。時給は1,000〜1,200円が中心で、早朝や短時間の現場を選べば体への負担を抑えられます。向いているのは、黙々と手を動かす作業が苦にならず、決められた手順を丁寧に守れる方。きつい点は、夏場の屋外清掃や、トイレ・水回りなど体力と気持ちの両方を使う現場があること。ただ「建物サービス業」は65歳以上就業者が104万人に達する大きなマーケットで(総務省2024年)、求人数が安定しているため仕事が見つかりやすい強みがあります。
介護・福祉補助
おすすめ度:★★★★☆
資格なしでも始められるポジションがあり、人の役に立つ実感が得やすい。腰への負担が大きいケースがあるため、体の状態に合わせた仕事選びが必要です。医療・福祉分野の65歳以上就業者は115万人で、10年で約2.3倍に急増しています(総務省2024年)。
飲食・小売(コンビニ・ドラッグストア等)
おすすめ度:★★★☆☆
シフトの融通が利きやすく、近所で働けるメリットが大きい。卸売・小売業は65歳以上就業者が133万人で最多(総務省2024年)。ただし繁忙時の体力消耗と、立ち仕事の負荷は考慮が必要です。
公的支援・シルバー人材センターという選択肢
シルバー人材センター
おすすめ度:★★★★☆
60歳以上を対象とした公益法人で、除草・清掃・軽作業・家事援助など地域に密着した仕事を紹介しています。収入は「配分金」として支払われ、雇用ではなく「請負・委任」の形式です。がっつり稼ぐというより、社会参加と少しの収入を求める方に向いています。配分金の目安は月3〜5万円程度が中心で、生活費を大きく支える額にはなりにくいのが正直なところです。向いているのは、収入よりも「地域とつながりたい」「体を動かす習慣を持ちたい」という方。逆に、月10万円以上をしっかり稼ぎたい方には物足りません。その場合は、パートや派遣と組み合わせて使うのが現実的です。
ハローワーク・公共就労支援
おすすめ度:★★★★☆
「生涯現役支援窓口」などシニア専門の相談窓口があり、求人紹介から面接対策まで無料で利用できます。派遣・パート・正社員の求人を幅広く扱っており、最初の相談場所として活用するのがおすすめです。
派遣登録
おすすめ度:★★★★☆
複数の派遣会社に登録しておくことで、仕事の途切れリスクを減らせます。担当者が間に入ることで、職場でのトラブルや悩みを相談しやすいメリットもあります。長期在籍を経て「無期雇用派遣」に移行できるケースもあります。
女性に人気の働き方
65〜69歳女性の非正規比率は83.2%(総務省2024年)。女性シニアの多くが短時間のパート・アルバイトという形で働いています。人気が高い職種は、コールセンター(受信)・施設清掃・介護補助・小売・事務補助。体力負荷が低く、シフトの融通が利くことが選ばれる主な理由です。
| 職種 | 体力 | 収入目安 | 未経験可 | おすすめ度 |
|---|---|---|---|---|
| コールセンター(受信) | 低〜中 | 時給1,100〜1,400円 | ◎ | ★★★★★ |
| マンション管理員 | 低〜中 | 時給1,000〜1,300円 | ◎ | ★★★★★ |
| 施設清掃 | 中 | 時給950〜1,200円 | ◎ | ★★★★☆ |
| 施設警備 | 中〜高 | 時給1,000〜1,300円 | ◎ | ★★★★☆ |
| 介護・福祉補助 | 中〜高 | 時給1,000〜1,300円 | ○ | ★★★★☆ |
| シルバー人材センター | 低〜中 | 配分金(時給換算で低め) | ◎ | ★★★★☆ |
| 事務・データ入力 | 低 | 時給1,050〜1,300円 | △ | ★★★☆☆ |
| 飲食・小売 | 中 | 時給1,000〜1,200円 | ◎ | ★★★☆☆ |
| 交通誘導警備 | 高 | 時給1,100〜1,400円 | ◎ | ★★★☆☆ |
| 配送・軽作業 | 中〜高 | 時給1,000〜1,300円 | ○ | ★★★☆☆ |
※収入目安は地域・雇用形態・経験により異なります。
何歳まで働ける?定年後の仕事・職種別の早見表
「何歳まで働けるのか」は、定年後の仕事を考えるときに最も多い疑問の一つです。法律上は高年齢者雇用安定法で70歳までの就業確保が努力義務となっていますが、実際に何歳まで働けるかは職種によって大きく変わります。採用の現場で見てきた実態を、職種別に整理しました。
| 職種 | 働ける年齢の目安 | 現場の実態 | 詳しく |
|---|---|---|---|
| コールセンター(受信) | 70代前半まで現役多数 | 座り仕事で体力負荷が低く長く続けやすい。覚える負荷はある | コールセンターは何歳まで › |
| マンション管理員 | 70代後半の現役も | シニアの主力職種。求人ごとに上限年齢が設定される場合がある | マンション管理は何歳まで › |
| ビル・施設清掃 | 70代以降も短時間で | 短時間・早朝シフトなら年齢を重ねても続けやすい | 清掃は何歳まで › |
| 施設・交通誘導警備 | 70代の現役が珍しくない | 求人が多く採用ハードルは低め。夜勤・屋外は体力次第 | 警備は何歳まで › |
あくまで採用現場で見てきた目安です。同じ職種でも、勤務日数・時間・夜勤の有無によって「無理なく働ける年齢」は変わります。各職種の年齢の実態は、上の各記事で詳しく解説しています。
働く前に知っておきたいお金の話【年収の壁と年金】
定年後に働き始めるとき、「いくら稼いでいいのか」という疑問が出てきます。扶養の範囲内で働きたい方や、年金と給与を両方もらいたい方にとって、知らずに損をするルールがいくつかあります。
働きすぎると損をする?「年収の壁」の基本
パート・アルバイトで働く場合、年収が一定額を超えると社会保険料の負担が発生したり、配偶者の扶養から外れたりすることで、手取りが減るケースがあります。これが「年収の壁」と呼ばれる問題です。主な壁は103万円・106万円・130万円の3つで、どの壁が関係するかは雇用形態や勤務先の規模によって異なります。
年収の壁の詳細な計算や、あなたの状況への当てはめ方については、こちらの記事で詳しく解説しています。
年金と仕事の両立|在職老齢年金に注意
65歳以降に老齢厚生年金を受給しながら会社員として働く場合、給与と年金の合計が一定額を超えると年金が減額される「在職老齢年金」の制度があります。月収と年金額によって影響が変わるため、働き方を決める前に自分のケースを確認しておくことが重要です。
高年齢者雇用安定法により、65歳までの雇用確保措置は企業に義務化されており、令和3年4月からは70歳までの就業確保措置も努力義務となっています。制度として「70歳まで働ける環境」は整いつつあります。
お金や資格より大切な「もう一度、必要とされること」
定年後の仕事について書かれたものの多くは、「おすすめ職種」「おすすめ資格」「老後の資産形成」に終始しています。でも私がこれまで数多くの定年後の求職者と話してきて感じることは、多くの方が求めているのは本当はそこではない、ということです。
「会社が居場所になる」ことの本質
定年後に仕事を続ける方の中に、「家にいると居場所がない」という方がいます。長年、仕事を通じて社会とつながり、役割を持ち、誰かに必要とされてきた方が、それが急になくなる。お金の問題ではなく、存在意義の問題です。
その感覚自体は、とても自然なことだと思っています。ただ私が現場で見てきて気づいたことがあります。「会社が居場所になる人」と「ならない人」の違いは、マインドにあります。
「テイカー」では居場所はできない
掃除の仕事を例に話します。手を抜かずに細部まで丁寧に清掃している人には、自然と感謝の言葉が集まります。住人や施設の方から挨拶をされ、ありがとうと言われる。だから管理者も継続して仕事を発注し、その人へも仕事が続き、評価が上がっていく。
一方で最初から「時給を上げてほしい」「あれが嫌だ、これが嫌だ」「もっとこうしてほしい」という姿勢の方は、自己評価がいくら高くても評価されません。これは経営者も同じです。市場に評価されるから事業が大きくなる。人に評価されるから仕事が続く。
私はこれを「テイカーマインドとギバーマインド」と呼んでいます。定年後の仕事において、年齢・経験・資格よりも、このマインドの違いが長続きするかどうかを決めると感じています。
年齢・資格より、このマインドの差が長続きを決める。現場で感じてきたことです。
長く続く人に共通する姿勢
「ここで何をもらえるか」より「ここで何ができるか」を先に考える。与える側に回ることで、自然とその場所が居心地よくなり、居場所になっていく。愛されたいなら、まず与える側に回ることが先です。
「承認」は年齢を問わず人に必要なもの
誰かに必要とされること、感謝されること、自分がここにいる意味を感じること。これは20代でも60代でも、人間に共通する根本的な欲求です。定年後にそれを仕事の中に見つけられた方は、体力が多少落ちても、収入が現役時代より下がっても、生き生きと働き続けています。
私がコールセンターの責任者として現場にいたとき、コロナ禍の最も厳しい時期でも「自分がいることで誰かの役に立てている」という感覚を持って出勤してくれたシニアスタッフがいました。その方々の働き方を見て、私自身が「仕事とは何か」を教えてもらいました。
定年後の仕事に求めるものを整理する
収入が必要か、社会参加が目的か、生きがいを求めているか。この3つは重複しますが、自分の中でどれが一番大きいかを整理してから仕事を選ぶと、職種選びの基準が自然と決まってきます。
定年後の仕事の探し方(遠回りしないために)
職種が決まったら、次は探し方です。定年後の仕事探しには、現役時代とは少し違う注意点があります。
ハローワーク・シルバー人材センター・求人サイト・派遣の使い分け
ハローワークは、まず相談したい方の第一歩として最適です。「生涯現役支援窓口」など、シニア専門の担当者がいる場合があり、求人紹介から面接対策まで無料で受けられます。ただし、情報の更新スピードや求人の多様性は民間サービスに劣る面があります。
シルバー人材センターは、がっつり稼ぐより地域での活動・社会参加を重視する方向けです。雇用ではなく請負・委任の形式のため、収入よりも「地域とつながる」「体を動かす」ことを重視する方に合っています。
求人サイト・アプリは、選択肢の幅が広く、スマートフォンから手軽に検索できます。シニア歓迎・未経験可などの条件絞り込みを活用することが、効率よく探すコツです。複数のサービスに登録して比較することをおすすめします。
派遣登録は、複数社に登録しておくことが重要です。一社だけだと仕事が途切れたときに困りますが、複数社に登録しておけば選択肢が広がります。また、担当者を通して職場への相談や条件交渉ができるため、直接応募より動きやすい面があります。
履歴書・面接で気をつけること
定年後の再就職で履歴書や面接対策に悩む方は多いです。「どこまで職歴を書くか」「退職理由はどう説明するか」「年齢をどう捉えてもらうか」。これらは書き方・伝え方ひとつで採用担当の印象が変わります。
仕事を探し始める前のチェックリスト
- 週に何日・何時間働きたいかを決めている
- 通院・介護など、休む可能性がある日程を把握している
- 年収の壁・年金との兼ね合いを確認している
- 体力的に無理のない勤務スタイルをイメージしている
- 「いくら稼ぎたいか」より「どう働きたいか」を整理している
- ハローワーク・派遣・求人サイトの使い分けを考えている
よくある質問
定年後、何歳まで働けますか?
法律的には、高年齢者雇用安定法により65歳までの雇用確保が企業に義務化されており、70歳までの就業確保も努力義務となっています。実態としては、総務省の調査で70〜74歳の就業率が35.1%、75歳以上でも12.0%と、70代でも多くの方が働いています。「何歳まで」は健康状態・体力・本人の意思によって個人差が大きく、一律に決まるものではありません。自分の体と相談しながら、働き方を調整していくことが現実的です。
未経験でも定年後に採用されますか?
職種によります。コールセンター(受信)・マンション管理・施設清掃・施設警備は、未経験者を前提に研修を用意している企業が多く、定年後の未経験採用の実績も豊富です。採用担当として言うと、未経験かどうかより「謙虚に覚えようとしているか」「自己管理ができているか」「職場に馴染もうとしているか」のほうが採用判断に影響します。経験より姿勢です。
定年後、働かないで暮らすことは可能ですか?
可能な方もいます。内閣府の調査では、経済的な暮らし向きに心配がないと感じる60歳以上が65.9%。貯蓄と年金で生活が賄える方は、無理に働く必要はありません。ただし、収入以外の目的──社会とのつながり・承認・生きがい──のために働く選択をする方も多くいます。「働かなくていい状況でも働いている」方の多くは、お金以外の何かを仕事に求めています。
定年後の仕事で一番人気なのは何ですか?
就業者数で見ると卸売・小売業が最多(133万人)ですが、これはもともと働いていた方が継続しているケースも含みます。定年後に新たに就くという観点では、マンション管理・施設警備・コールセンター・施設清掃が選ばれやすい職種です。シニア採用に積極的な企業が多く、未経験でも始めやすいことが共通点です。私の主観では、体力負荷・安定性・採用のしやすさを総合してマンション管理員とコールセンター受信が双璧です。
定年後、女性に向いている仕事は何ですか?
65〜69歳女性の非正規比率は83.2%(総務省2024年)で、多くの方が短時間のパート・アルバイトを選んでいます。女性に人気が高いのは、コールセンター(受信)・施設清掃・介護補助・小売・事務補助です。いずれも体力負荷が比較的軽く、シフトの融通が利く点が選ばれる理由です。家庭やご自身の体調と両立しやすい働き方から始めるのが、長く続けるコツだと感じています。
70歳から始められる仕事はありますか?
あります。総務省の調査では70〜74歳の就業率は35.1%で、約3人に1人が働いています。70歳からでも始めやすいのは、施設警備・マンション管理・短時間の清掃・シルバー人材センターの軽作業です。体力に合わせて勤務日数や時間を調整しやすい職種を選ぶことが、無理なく続ける鍵になります。年齢を理由に諦める必要はありませんが、フルタイムより短時間から始めるほうが体への負担が少なく、結果として長く働けます。
この記事のまとめ
- 65〜69歳の就業率は53.6%(約2人に1人)。70代でも多くの方が働いているが、働かない選択も当然ある
- 採用で落ちる人の共通点は「前職の実績を押し出す」「勤怠管理が曖昧」「面接で態度に出る」の3つ。経験より姿勢が採用を左右する
- 体力は「もっとできる」と感じる手前でブレーキをかけられる人が長続きする。食事・睡眠・健康管理が長期就労の土台
- お金や資格より大切なのは「与える側に回れるか」。テイカーマインドでは居場所はできない。仕事を通じた承認と貢献が、定年後の働き方の本質

