「清掃の仕事って、きついですか?」「自分でも続けられますか?」「給与はどのくらい?」——そういう疑問を持って来る方に、採用担当として正直に伝えてきた言葉があります。「向いている人には間違いなくいい仕事。でも楽な仕事と思って来ると、想像より早く限界が来る」と。
義母がオフィスビルの清掃スタッフとして今も現役で働いています。義父も同じ会社で清掃員をしていました(現在引退)。採用担当として転職活動中のシニアを何人も見てきた経験と、身近にいる清掃員の家族から聞いてきた話を合わせれば、求人票には絶対に書いてない現実が見えてきます。仕事の種類・きつさ・給与・向いてる人・定年・資格まで、この1本に全部まとめました。
採用担当の正直な結論——清掃はシニアに「合う仕事」か
結論から言います。清掃の仕事は、条件が合う人には長く続けられる仕事です。定年がない職場が多い、あるいは70代・80代でも現役で働けている人がいる。ITが苦手でも問題ない。一人で黙々と動くのが好きな人には、むしろ快適な環境です。
ただし「楽そうだから」という理由で選ぶと、かなりの確率で早期離職になります。夏場の屋外作業・腰への負担・冬の水仕事——これは求人票には「普通の作業です」と書かれていても、シニアの体には想像以上に響きます。
内閣官房・厚生労働省「省力化投資促進プラン(ビルメンテナンス業)」によれば、ビルクリーニング業(清掃)の従事者は60代以上が約6割(57.9%)を占めます。シニアが最も歓迎されている職種のひとつであることは間違いありません。問題は「向いているかどうか」の見極めです。それをこの記事で整理します。
清掃の仕事の種類——6タイプ、配属先で何が変わるか
「清掃員」とひとくちに言っても、配属先で仕事の内容・体力負担・人との関わり方がまったく違います。自分がどのタイプを選ぶかを決めることが、長続きするための最初のステップです。難易度を正直に言えば、商業施設(最難)>ホテル客室>マンション>オフィスビル(最も間口が広い)の順です。
シニアが最初に選ぶなら①か②。体力・持病の状況に応じて作業内容を事前に確認することが重要
① オフィスビル清掃——シニアに最も間口が広いタイプ
シニアに最も多い配属先です。朝の早い時間(6〜8時台)に出勤し、テナント企業の社員が来る前に掃除を終えるのが基本スタイル。トイレ・執務フロア・エントランス・共用廊下などを担当します。室内・空調ありで、初めて清掃に入るなら最も現実的な選択です。義母がまさにこの形で働いていますが、「空調が効いているから楽」という印象を持ちやすい一方、本人の言葉を借りると「腰の疲れが一晩では取れなくなってきた」のが正直なところ。楽な仕事ではないけれど、環境は整っている——そこが正確な表現です。
② マンション・アパート清掃——求人数は多いが夏が本番
居住用建物の共用部を清掃します。エントランス・廊下・階段・ゴミ庫・駐輪場などが主な対象。週2〜3日・午前中のみという短時間求人が多く、シニアが最も入りやすいタイプのひとつです。ただし外廊下・駐輪場・ゴミ庫の清掃は屋外作業で、夏場のきつさは侮れません。「室内の清掃だろう」という思い込みで応募するとギャップが大きくなります。応募前に「屋外作業の内容と割合」を必ず確認してください。
③〜⑥ その他のタイプ
③商業施設・ショッピングモールは土日メインで、フードコートのゴミ回収・トイレ巡回など人ごみの中での連続作業が続きます。ポリッシャーなどの機械操作もあり、清掃の中で最もハードな配属先です。清掃未経験のシニアには難易度が高く、経験を積んだ後の選択肢として考えてください。④ホテル客室清掃は1室ごとに完結する達成感がある一方、ベッドメイキング・浴槽清掃で前かがみ・しゃがみ姿勢が連続し、6タイプ中で腰への負担が最大です。⑤病院・医療施設は感染対策マニュアルが厳格で研修が長い分、時給はやや高め。マニュアル通りに動ける几帳面な人が向いています。⑥特殊清掃は亡くなった方の部屋の原状回復など精神的負荷が大きく、通常の求人サイトには出ていません。最初の仕事としては推奨しません。
義母の清掃員生活——1日の流れのリアル
具体的にどんな1日を過ごすのかを、義母の実態をもとに再現します。一般的な求人票に書かれているモデルケースではなく、実際に働いている人間の動き方です。
早朝出勤・午前中退勤のスタイル。義母は昼過ぎには帰宅し、家事や孫のサポートに入っている
夏は帰りの通勤が暑く、冬の朝は寒い。仕事中は空調があるが、通退勤で体力を消耗する。それでも「午後が自由になる」という設計は、シニアの生活リズムに合わせやすいという義母の話です。早朝出勤を「辛いシフト」と取るか「午後が全部空く」と取るか——ここで合う人と合わない人が分かれます。なお、早朝が合わない場合は夕方以降の夜間清掃という選択肢もあり、日中に別の仕事をしながらのWワークにも向いています。
向いている人・続かない人——採用担当の見極めポイント
「続く人」に共通する5つの特徴
◯ こういう方は長続きする傾向があります
- 「これぐらいでいいや」と手を抜かない人——向いているかどうかの核心がここです。誰も見ていないトイレを丁寧にできる人が、結果として評価されて長く続けられます
- 真面目・寡黙・淡々とこなせる人——コールセンターとは真逆のキャラクターが向いています。人が苦手な人は自分の仕事に集中しやすい環境で、それが実は強みになります
- 「見えない仕事」に誇りを持てる人——備品の補充はあって当たり前、でもないと怒られる。感謝されにくい仕事でも、誰かの一日を支えているという事実がある。そこに価値を見出せる方です
- 体を動かすことが苦でない人——座っているより動いている方が気楽、という感覚の方は本当に向いています。清掃は週2〜3日の適度な運動として健康維持にもつながります
- ITへの苦手意識がある人——日報はスマホ入力か手書きが多く、PCが最低限でよい職場が多い。「IT不問」の求人が圧倒的に多いのが清掃業の特徴です
正直に話します——こういう方は早めに再考を
✕ 向いていない可能性が高いケース
- 腰・膝に持病がある方——かがむ・しゃがむ動作が多い清掃は、下半身への負担が想像以上です。医師に相談した上で、配属先の作業内容を事前に確認してから応募してください
- 「楽な仕事のはず」という前提で入る方——体力への過信は早期離職の最大原因です。若いころのサラリーマン時代の体力感覚は当てになりません。通勤疲労も含めた「総体力消費」で判断してください
- 人とのつながりを仕事に強く求める方——清掃は基本的に一人作業です。社会とのつながりを日々の仕事から得たい方は、コールセンターや接客系の方が合っています
- 汚れ・ゴミへの強い抵抗感がある方——喫煙所の灰皿交換・男性トイレの清掃は避けられない現場が多い。「掃除自体は嫌いではないが、特定の汚れへの抵抗が強い」という場合は事前に確認を
きつさのリアル——正直に全部話します
求人票には「楽な仕事」「誰でもできる」と書かれていることが多い。ですが義母から話を聞き、転職者を何人も見てきた立場から言うと、それはシニアの体の感覚に立っていない言葉です。清掃固有のきつさを正直に整理します。
夏場の壁——熱中症は本当に起きる
屋外の清掃(マンション外廊下・ゴミ庫・駐輪場)は夏場が最もきつい時期です。気温が上がる時間帯に屋外で作業を続けることになり、熱中症リスクが高まります。「熱中症になるとは思っていなかった」という方ほどリスクが高い。帽子・水分補給・こまめな休憩は最低限の対策ですが、それでも配属先によって限界は違います。室内配属を確約してもらえるかを面接で確認することが一番の防衛策です。
腰・膝の壁——動作の積み重なりがシニアの体に響く
トイレ掃除・床の拭き掃除・低い場所の清掃——いずれもかがむ・しゃがむ動作の繰り返しです。若いころなら問題ない動作でも、60代・70代には積み重なって響きます。義母の言葉がそのまま素直な実態です。「腰の疲れが一晩では取れなくなってきた」。持病がある方は医師に確認してから応募してください。私が勤務するオフィスで膝をつきながら一生懸命掃除している60代後半の男性を見ていると、誇りを持って働いている姿に頭が下がります。でも「そこまでしなくていい」とも思う。無理なく続けることが最優先です。
冬場の壁——水仕事と通勤疲労の組み合わせ
室内清掃であっても、冬場の水回り清掃は手へのダメージがあります。特に女性の場合、手荒れが慢性化するケースが少なくありません。さらに冬場は通勤だけで体力を消耗します。職場に着いてからではなく、職場に着くまでで疲れる——これがシニアの体の変化です。自宅から30分以内の物件を優先することをおすすめします。
承認の壁——「感謝されないけど、ないと怒られる」仕事
清掃の仕事には「備品はあって当たり前・でもないと怒られる」という構造があります。営業のように数字で承認される仕事とは真逆です。それでも声をかけてくれる人はいます。「おはようございます」「いつもありがとうございます」——その挨拶が感謝の気持ちだと思えればそれが力になる、という言葉を現場で働く人から聞きました。需要がなくならないという事実が最大の承認だとも言えます。そこに誇りを感じられる人が、長く続けられます。
清掃を辞めやすい3つのタイミング——ここを越えると定着する
清掃に限らず、シニアが新しい仕事を始めるとき「辞めやすいタイミング」は共通しています。マンション管理・警備など他業種を見てきた経験からも、同じパターンが繰り返されます。逆に言えば、この3つの壁を越えた人は定着しやすくなります。
「3ヶ月」「最初の夏・冬」「体調・家庭の変化」の3つが辞めやすい節目。最初の季節を越えると定着率が大きく上がる
清掃を辞めて次に選ばれる仕事で最も多いのは「座って働きたい」という動機からのコールセンターです。ただしPC操作・電話トークという別のスキルが必要になり、体は楽になっても畑違いに戸惑う方も少なくありません。「体力的なきつさ」と「精神的なきつさ」は種類が違います。自分がどちらのきつさに耐えやすいかが、仕事選びの大事な軸になります。
清掃員の給与——相場と現実を正直に
清掃員のパート時給は地域差が大きいですが、最低賃金近辺〜1,200円程度が多い水準です。日中のオフィスビル清掃は最低賃金プラス50〜100円程度という求人も珍しくない一方、早朝シフト・病院・商業施設は最低賃金より100〜300円高い設定が多い。地域差もあり、時給が高いのは都市圏(東京は1,200円台)、低いのは地方(1,000円前後)という開きがあります。「稼ぎたい人」には物足りない水準であることも、正直に伝えます。
早朝(5〜8時)や夜間帯は割増賃金がつくため、時間帯の工夫で同じ日数・時間でも月収が1〜2万円変わる
収入を上げる最も手軽な方法は「時間帯を変えること」です。同じ施設・同じ仕事でも、早朝シフト(6〜10時台)を選ぶだけで時給が100〜200円高くなる求人が多い。夜間(深夜帯)は時給が最も高くなりますが、就寝時間が変わると体調管理が難しくなり、結果的に欠勤が増えるケースをよく見てきました。収入と体への負担のバランスを考えると、シニアには早朝シフトが最も現実的です。パートの時給に上限を感じ、本格的に稼ぎたい方には、ハウスクリーニングのフランチャイズで独立するという段階もあります(繁忙期の単月100万円・年収1,000万円超という水準も実在します)。ただしこれはパートとは別次元の話です。
◯ 年収の壁と清掃の相性
清掃の仕事は「160万円(2026年12月以降178万円)の壁」「130万円・180万円の壁(60歳以上は180万円が社会保険の扶養基準)」を意識した扶養内勤務に最も向いている職種のひとつです。週2〜3日・午前中のみという働き方が多く、勤務日数・時間の調整がしやすいため、年金受給との組み合わせで収入を設計しやすい。高時給の仕事を1年で辞めるより、自分に合った仕事で5年続ける方が総収入は大きくなります。制度の詳細は【2026年最新】シニアの年収の壁 完全ガイドで解説しています。

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定年は何歳まで——シニアが長く働けるか
清掃の仕事は、体が動く限り年齢に関係なく働き続けられる数少ない職種です。理由は雇用形態にあります。清掃は正社員より嘱託・有期雇用での採用が主流で、契約更新を繰り返す形になるため、会社の方針と本人の体力・意欲が続く限り雇用が続きやすい。70代・80代の現役清掃員は珍しくなく、説明会で清掃会社の担当者から聞いた話でも「定年なし」「80代まで在籍している」という声は複数ありました。義父も定年後に嘱託としてそのまま残り、刑務施設の清掃という少し特殊な現場で長く勤続しました(現在は引退)。
70代・80代でも現役が珍しくない職種。ただし無理な継続は体を壊す原因になる
ただし「定年なし=いつまでも採用される」ではありません。年齢より重視されるのは健康状態と体力です。定年がないということは、裏を返せば「続けられる体の状態かどうか」が常に問われる雇用形態でもあります。清掃を辞めるパターンで最も多いのは「腰・膝・体力的にきつくなってきた」という理由で、義父の引退もそうでした。誰かに「もう来なくていい」と言われたわけではなく、自分でやめ時を判断した——それが清掃員の引退の実態に近いものです。
注意サイン——体力低下のリアルなサイン3つ
- 「休み癖」が始まる——体調不良・どこかが痛いという欠勤が増えてきたとき。一度休み癖がつくとその後の勤怠が安定しない。本人は「たまたま」と思っていても、体が限界に近いサインであることが多い
- 中腰・膝つきがきつくなる——トイレ掃除や床磨きなど、膝をつく・中腰になる作業が清掃の中心。この姿勢がきつくなってきたとき、仕事の質にも体への負担にも直結します
- 通勤そのものが消耗する——清掃は勤務中より通勤で体力を使うことが多い。特に早朝出勤・夏冬の厳しい季節は、現場に着く前に疲れてしまうケースがある
大切なのは「サインが出たらすぐ辞める」ではなく「サインを無視して無理を続けない」ことです。「もう無理かな」と思ったら、勤務時間を減らす・種別を変えるという選択肢もある。引退を急ぐより、まず負担を調整することを考えてほしい。早めに辞めてしまうより、無理のない形で続ける選択肢を持ち続けることが、結果的に長く現役でいられる道につながります。
資格は必要か——採用担当の正直な答え
結論から言います。清掃の仕事を始めるのに、最初から資格は必要ありません。求人の大半が「未経験歓迎・資格不問」で、入社後の研修で基本を学ぶ流れが一般的です。
ただし「資格を取れば正社員になれる」「昇給できる」という期待には、正直に伝えることがあります。シニアの場合、定年規定の関係で正社員よりも嘱託・有期雇用になるのが現実で、資格が職責で直接活きるシーンは少ない。清掃パートの時給は委託費ベースで設計されており、個人の資格で大きく動く構造になっていないためです。資格は「取れば有利」ではなく「仕事の質を上げる・ステップアップの手段として考えるなら意味がある」という位置づけです。
◯ 清掃関連の主な資格(取るなら優先順)
- ビルクリーニング技能士(国家資格)——ビルメンテナンス会社での評価アップに最も直結しやすい。1・2・3級があり実技試験あり。3級は実務経験6か月以上から受験可能で、働き始めて半年後には最初の目標にできる。働きながら取得できる
- 清掃作業監督者(国家資格)——特定建築物の清掃作業の監督者に必要。チームリーダーや現場責任者を目指す場合に有効
- ハウスクリーニング技能士(国家資格)——住宅向け清掃スキルの証明。フランチャイズ参入・独立時に有利になる資格
現実的な順序は「まず資格なしで働き始める → 仕事が自分に合うと確信したら3級を目指す → 次のステージ(キャリア継続か独立か)によって資格の種類を選ぶ」です。資格取得はゴールではなく、仕事をより深く長く続けるための手段として位置づけてください。なお勤務先の会社が受験料・テキスト代を補助するケースもあるため、面接時に「資格取得のサポートはありますか」と聞くことは、向上心のある印象を与える良い質問です。
資格は「採用されるため」ではなく「質を上げる・次のステップへ進む」ための手段。目的別に選ぶ
女性シニアの清掃——採用担当の率直な見解
「はまれば女性の方が長く続く」——これが私の実感です。細かいところに目が届く、気になったところを放置できない、きれいにすることへのこだわりがある。そういう感覚は清掃の仕事で大きな強みになります。説明会で複数の清掃会社の担当者と話しても「女性スタッフの方が丁寧で長続きする」という声は共通して挙がっていました。
女性が知っておくべき現実として、施設によっては女性スタッフが男子トイレの清掃を担当する場面があります。使用者がいないタイミングを選ぶか「清掃中」表示を出して入るのが原則ですが、抵抗がある場合は面接で「男子トイレの清掃はどういった形で行いますか」と確認するのは失礼ではありません。担当が少ない現場・時間帯を選ぶことも可能です。体力面では、義母の場合オフィスビルの室内清掃なので空調はありますが、冬場の水仕事による手荒れ、夏冬の通勤での消耗は正直に言って大変そうです。それでも朝6〜7時に出て昼過ぎに帰宅し、午後は家事・孫の世話に入れるというライフスタイルの設計しやすさが、本人が5年以上続けている理由です。
やりがいと承認——「感謝されにくい仕事」を続ける人の正直な話
清掃の仕事は「感謝されにくい」という話をしました。でも続けている人は必ず、自分なりの「やりがいの形」を見つけています。営業のように数字が積み上がる達成感はない。けれど「汚れていたり荒れているものが、自分の手で美しくなる」というビフォーアフターの達成感は、他の仕事では得られない種類のものです。あなたの作業がそのまま結果として目に見えてくる——そこにやりがいを感じる人が確かにいます。
◯ 「需要がなくならない」という事実が最大の承認
誰かに直接感謝されることは少ない。でも、清掃の仕事がなくなることはありません。世界一の超高齢化社会の中で、シニアの活躍の場として確実に求められ続けている。「この仕事がなければ誰かが困る」という事実こそが、最大の承認かもしれません。承認欲求が外向きで強い方・数字で仕事を測りたい方には向きにくい仕事ですが、内側から誇りを持てる人・変化を素直に喜べる人・小さな接触を大切にできる人は、長く続けられます。
働くことの意味を、採用担当として実感する瞬間があります。辞めた人を街中で見かけて、急に老け込んでいた——という経験が何度かあります。体を動かす・通勤する・人と接触するという刺激が一気になくなったとき、体と気力の両方が落ちるのが早い。義父が引退した後、みるみる老け込んだのに対し、義母はまだ現役で表情も声も違う。仕事が体を動かす習慣と、社会とつながっている実感を支えているのを間近で見てきました。月収の多寡だけでは、シニアの働く意味を捉え切れない部分があると思っています。
清掃業界の今と未来——3Kから「テクノロジーが変える現場」へ
清掃業は長らく「3K(きつい・汚い・危険)」と言われてきた業界です。ただ、その「3K」が変わりつつあります。採用担当者同士の交流会で、遠隔で作業を指示できるゴーグル(サングラスのような形状のもの)のデモを見たことがあります。清掃員が現場で作業しながら、離れた場所の担当者から手順を確認できる仕組みです。清掃ロボットの導入も、商業施設や病院などでは着実に広がっています。
ロボットが入ることで「仕事がなくなるのでは?」と思う方もいるかもしれません。でも実際には逆で、ロボットが担う部分と人間が担う部分が分かれ、シニアスタッフの負担が軽減される方向に動いています。人手不足は深刻で、求人数は増え続けています。「ITが苦手でも入れる業界」という構造は変わりません。
面接対策——採用担当が教える受かる人・落ちる人
清掃の面接では、スキルや資格よりも「この人は長続きしそうか」という定着の見通しを採用担当は見ています。同じ人でも、伝え方ひとつで印象が大きく変わります。まず全体像を対比で整理します。
採否を分けるのはスキルより「正直さ」と「継続の見通し」。同じ内容でも伝え方で印象が変わる
◯ 採用担当が「ぜひ採用したい」と思う面接の姿勢
- 体力・体調について正直に話す——「腰が少し弱いですが、この程度の作業なら問題ありません」という正直な自己申告は、むしろ信頼を生みます。隠して入社してすぐ辞める方が双方にとって損失です
- 挨拶・受付での態度が丁寧——清掃の仕事は住人・テナントと日々接します。面接官だけに丁寧にしても意味がない。受付・電話応対の態度を採用担当は見ています
- 継続意思を明確に伝える——「体が動く限り長く続けたい」という意志を、理由とともに伝える。採用担当に定着率の高さを予感させる言葉です
✕ 落とされやすいパターン
- 過去の肩書き・キャリアを強調する——清掃の仕事では過去の実績より「今、体を動かせるか・謙虚に学べるか」が重要です。元管理職のアピールは、年下リーダーの指示に従えるかを疑われます
- 体力を過大申告する——「まだまだ動けます」と言い切る方ほど、夏場に体を壊す傾向があります。採用担当も経験上知っています
- 「楽そうだから選んだ」を正直に言ってしまう——動機として持っていても、面接では「体を動かすことが好き」「自分のペースで働きたい」という言い方に変換してください
◯ 面接でこれを聞いていい
「夏場の屋外作業の具体的な内容を教えてください」「腰に持病があるのですが、担当エリアの調整は可能でしょうか」——これらを面接で聞いても印象は悪くなりません。入社後のギャップを防ぐための正当な確認です。むしろ事前に確認できる人の方が、入社後に長続きする傾向があります。
清掃の求人の選び方——応募前に確認すべき5点
◯ 求人票チェックリスト(応募前に必ず確認)
- 勤務場所の種類が明記されているか——「各種施設」という曖昧な表現は配属先が読めません。「オフィスビル清掃」「マンション共用部」と明記されているものを選ぶ
- 屋外作業の有無——求人票に「外廊下・駐車場・ゴミ庫」などが含まれているかを確認。夏場の体力消耗に直結します
- 通勤距離30分以内か——通勤疲労が想像以上に積み重なります。自宅から近い物件が長続きの前提条件です
- 研修体制があるか——「最初の1〜2週間は先輩スタッフが同行」という表記があれば安心。研修なしの即戦力採用は未経験者には厳しい
- シフトの柔軟性——週に何日・何時間から働けるか。通院・家族の予定と調整できるかを事前に確認してください
よくある質問
清掃員の仕事はシニアでも続けられますか?
向いている方には長く続けられる仕事です。定年なしの職場が多く、70代・80代の現役清掃員も珍しくありません。ただし「楽な仕事」というイメージで入ると、腰への負担・夏場の体力消耗などで早期離職になりやすいため、配属先の作業内容を事前に確認することが重要です。最初の3ヶ月と最初の夏・冬を越えると定着しやすくなります。
清掃員に向いているシニアはどんな人ですか?
真面目・寡黙・淡々とこなせる方が向いています。ITが苦手でも問題なく、人との関わりが少ない環境で自分のペースで動けることが強みになります。「見えない仕事に誇りを持てる」「誰も見ていなくても手を抜かない」という姿勢が長続きの鍵です。逆に、承認欲求が強い方・数字で仕事を測りたい方・人との関わりからやりがいを得たい方には向きにくい仕事です。
清掃の仕事で夏場に熱中症になるリスクはありますか?
屋外の清掃(マンション外廊下・ゴミ庫・駐輪場)は夏場が最もきつい時期です。気温が上がる時間帯の屋外作業で熱中症リスクが高まります。帽子・水分補給・こまめな休憩は最低限の対策ですが、室内配属を確約してもらえるかを面接で確認することが一番の防衛策です。室内清掃でも「室内だから大丈夫」と油断せず、水分補給を怠らないことが大切です。
清掃の仕事は腰や膝への負担はありますか?
かがむ・しゃがむ動作が多く、60代・70代には積み重なって響きます。トイレ掃除・床磨きなど膝をつく作業が多い現場は特に負担が大きい。一方、共用部の拭き掃除やゴミ回収など立ったままできる作業が中心の現場もあります。持病がある方は医師に確認し、面接で「腰が弱いが担当エリアの調整は可能か」と正直に相談してください。無理なく続けることが最優先です。
清掃の仕事は感謝されにくい仕事ですか?
「備品はあって当たり前・でもないと怒られる」という構造があります。直接感謝される機会は少ないですが、住人・利用者からの「おはようございます」「いつもありがとうございます」という挨拶が承認の形として機能しています。また「汚れていたものが自分の手できれいになる」というビフォーアフターの達成感、「需要がなくならない仕事をしている」という誇りが、外部の評価に依存しないやりがいを作ります。そこに価値を見出せる方が長く続けられます。
清掃員の給与・時給はどのくらいですか?
地域差はありますが、時給900〜1,200円程度が一般的な水準です。週4日・1日5〜6時間勤務で月収7〜10万円が目安。早朝(5〜8時)や夜間帯は割増賃金がつくため、時間帯の工夫で同じ日数・時間でも月収が1〜2万円変わります。清掃パートの時給は委託費ベースで上昇余地が限られるため「稼ぐ仕事」ではなく、年金・扶養との組み合わせで「続ける仕事」として設計するのが現実的です。
清掃の仕事に資格は必要ですか?
最初から資格は必要ありません。求人の大半が未経験歓迎・資格不問で、入社後の研修で基本を学ぶ流れが一般的です。ステップアップを目指す方にはビルクリーニング技能士(国家資格)の取得が評価につながりやすく、3級は実務経験6か月以上から受験できます。ただしシニアのパート・嘱託では資格が時給に直結しにくいのが実態です。「採用されたい」なら不要、「もっとうまくなりたい・次のステップへ」なら取る価値があります。
清掃の仕事はWワークや年金と組み合わせられますか?
はい、組み合わせやすい職種です。早朝シフト(6〜10時)と夜間シフト(20〜24時)の両方に求人があり、週2〜3日の短時間から始められます。年収の壁(160万円・2026年12月以降178万円/60歳以上の社会保険扶養は180万円)の範囲内で調整しやすく、年金受給額に応じた収入設計が可能です。まず1つの仕事で体を慣らしてからWワークを判断することをおすすめします。
まとめ
清掃の仕事は「ITが苦手」「一人で黙々と働きたい」「体を動かすことが苦でない」という方にとって、シニア期に長く続けられる選択肢のひとつです。定年がない、あるいは70代以降も働ける環境が整っており、年金・扶養との組み合わせもしやすい。清掃ロボットや遠隔技術の導入で現場の負担が軽減されつつある今、この業界の将来性も確かです。
ただし「楽な仕事」というイメージだけで選ぶと、夏場の体力消耗・腰への負担・冬の水仕事といった清掃固有のきつさで早期離職になります。応募前に「室内か屋外か」「通勤距離は30分以内か」「腰・膝に問題がないか」を確認し、面接で配属先の作業内容を正直に聞くことが、長く続けるための一番の準備です。世界一の超高齢化社会でシニアの活躍の場として確実に求められているこの業界に、ぜひ正直な情報を持って一歩踏み出してほしいと思います。

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