「年金だけでは月に3〜5万円足りない。だから働きたい」——この動機を採用担当として聞いたとき、私は正直なところ好感を持ちます。自分の生活実態を数字で把握している人は、採用した後も長く続く傾向があるからです。
しかし問題は、そういう人ばかりではないことです。採用担当として年間1,000名以上のシニア求職者と向き合ってきた経験から言えば、「月にいくら必要か」を答えられないシニアは5割を超えます。この記事では、老後の月3万円赤字を「働いて埋める」という選択が採用担当の目にどう映るか、そして「立ち位置を知っている人」が何をしているかを正直にお伝えします。
「なぜ働くのか」を答えられないシニアが面接に来る
採用担当として面接の場で必ず確認することがあります。「今回、なぜ仕事を探そうと思ったのですか?」——この質問に対する答えが、その後の採用判断に大きく影響します。
一番多い答えは「体を動かしたい」「社会とつながっていたい」「暇だから」です。これ自体は悪くありません。しかし続けて「月にどれくらい稼ぐことが目標ですか?」と聞くと、明確に答えられない人が多い。「とにかく少しでも」「年金の足しに」——この答えが返ってくる割合は、肌感覚で5割を超えます。
「他責」と「自責」——採用担当が面接で読み取るもの
「前の会社が悪かった」「景気が悪い」「政策のせいで年金が少ない」——こういった言葉が面接で出てくる人と、「自分にはこれだけ必要で、そのためにこう働きたい」と話せる人では、採用担当の目に映る像が全く違います。
他責型の人が必ずしも仕事ができないわけではありません。しかし採用担当の立場で言えば、職場で何か問題が起きたとき「あの人のせい」「会社のせい」になりやすい人を優先的に採用することはできません。採用は職場全体への影響を考えて行うものだからです。
採用担当もまた、採用の結果に責任を持っています。だからこそ、自分の人生を自分ごととして考えられる人を選びたい。「月3万円の赤字を自分で計算して、埋めるために来た」という人は、その時点で採用担当の信頼を得ています。
「月3万円の赤字」を自分で計算しているか
「老後の赤字」という言葉は漠然と使われがちですが、自分の数字として把握している人は少数派です。まず現実のデータを確認しておきます。
総務省の家計調査(2023年)によると、65歳以上の無職夫婦世帯の平均的な月間収入は約24万円(主に年金)、支出は約28万円で、月約4万円の赤字が生じています。単身世帯では収入約13万円に対して支出約15万円、月約2万円の赤字です。
この「月3〜5万円の赤字」は統計的に見ても現実に即した数字です。そしてこの赤字を30年間放置すると、累計で1,000万円を超える補填が必要になります。「働いて埋める」という選択は、その現実への具体的な対応です。
「立ち位置の理解」とは何か——採用担当が見る2軸
採用担当として、シニア求職者の「立ち位置の理解度」を読む際に使っている軸があります。
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「資産というと大げさかもしれないけど、立ち位置としてね」——この言葉が示すように、立ち位置の理解とは大げさな資産管理ではありません。「自分は月にいくら必要で、何日・何時間なら無理なく働けるか」という基本の数字を持っているかどうかです。それが採用担当との「建設的な話」の出発点になります。
ところで——仕事を探す前に、もう一つ手を打てることがあります。家の中に眠っている「資産」の棚卸しです。骨董品、食器、カメラ、レコード。昭和の家には意外と値がつくものが残っています。月3万円の赤字を働いて埋めることと並行して、手元の資産を確認しておくことも、立ち位置を知ることのひとつです。
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「月3〜5万円の赤字を埋めるために働きたい」——この動機を採用担当として聞いたとき、私は率直に好感を持ちます。その理由を説明します。
◯ 採用担当が「月3万円赤字を埋めたい」動機を好む理由
具体的な数字を持っている人は、自分がどれくらい働けるか・無理なく続けられるかを長期目線で考えられます。「月3万円なら週2日・1日4時間で足りる」と分かっている人は、過剰に仕事を詰め込んで体を壊すリスクが低い。採用担当として「建設的な話をしやすい」のです。
「不安ドリブン」の動機は悪いことではない
一方で、「老後が不安だから働かなきゃいけない」という不安ベースの動機を持つ方も多くいます。これを採用担当としてどう見るか——正直に言えば、悪くないと思っています。
「前向きに働きたい!」という人より、「このままでは困る。だから動く」という危機感がある人のほうが、実際に長く続くケースを採用担当として多く見てきました。大事なのは動機の「明るさ」ではなく「具体性」です。漠然とした不安ではなく、「月にいくら・週に何日」という具体的な数字に落とし込まれた不安は、立派な動機です。
採用担当が困る動機——「とにかく何か」「暇だから」
逆に、採用担当として正直に言えば困る動機があります。「とにかく何でもいいから働きたい」「家にいても暇だから」——これが唯一の動機として出てくる場合です。
悪意があるわけではありません。ただ、条件の話になると「何でもいいです」「おまかせします」という答えが続きます。採用担当はあなたの生活設計の代わりはできません。「何でもいい」という人を採用すると、条件が合わないと気づいたときに突然辞めていくリスクが高くなります。採用担当として、それが一番困ります。
「立ち位置を知っている人」と「知らない人」の違い
採用担当として見てきた「立ち位置を知っている人」には共通点があります。それは自分の生活を数字で把握していることだけではありません。
◯ 「立ち位置を知っている人」の5点チェック
- 「月○万円必要・週○日・1日○時間」という数字が明確に答えられる
- 説明会・面接での服装・挨拶・礼節が整っている
- 「今の自分」を基準に話す(過去の肩書きや前職の話を持ち出さない)
- 条件が合わない場合に「それなら別の仕事を探す」と判断できる
- 年下の面接官・スタッフにも同じ礼節で接している
採用担当自身も「立ち位置」を考え続けている
採用担当として毎日シニア求職者と話しながら、私自身も同じ問いと向き合っています。
「自分の立ち位置を考える」とは、特別な人間だけがやることではありません。採用担当も、現役の会社員も、60代のシニア求職者も——「今自分はどこにいて、どこへ向かうのか」を問い続けることが、建設的な動き方につながります。
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この3つの数字を持って面接に来る人は、採用担当にとって「話しやすい人」です。逆に言えば、この数字がない人との会話は「条件はどうしますか?」「何でもいいです」という堂々巡りになりやすい。面接の時間は限られています。数字を持って来ることが、採用担当との会話を生産的にする最短の方法です。
採用担当が伝えたいこと——定年はただの中間点
最後に、採用担当として一番伝えたいことをお伝えします。
「老後の月3万円赤字を働いて埋める」という発想は、後ろ向きな選択ではありません。むしろ現実を直視して、自分の手で対応しようとする前向きな選択です。採用担当として、そういう人を採用したいと思っています。
60歳で定年を迎えても、人生100年時代において残りの時間は40年以上です。「定年=終わり」ではなく「定年=折り返し地点」。その先をどう設計するかが問われています。
月3万円の赤字を把握している人は、その設計をすでに始めています。「自分には月3万円が足りない。だから週2日・4時間働く」——この計算ができている人は、採用担当の目に「自分の人生を真剣に考えている人」として映ります。
「稼ぎたい額を答えられないシニアが5割」という現実の中で、あなたが数字を持って来ることはそれだけで差別化になります。特別なスキルも、輝かしい経歴も必要ありません。「自分の立ち位置を知っている」——それだけで採用担当との会話は変わります。
「昔はこうだった」「前の職場では」——これはどこへ行っても失敗する
自分の立ち位置を知っている人は「今の自分」を基準に話します。「以前は部長だった」「前の会社ではこのやり方だった」という言葉が面接で出てくる人は、採用担当として「どこへ行っても同じことをやる人」と判断します。そうじゃないと思うなら、いつになってもヘッドハントされるはず——採用担当として、それが正直な見方です。「昔はこうだった」が口癖になっている方は、今日からやめてみてください。
よくある質問
「月にいくら必要か」を面接でどう答えればいいですか?
具体的な数字で答えることが最善です。「年金が月○万円で、生活費が月○万円かかるので、月○万円ほど稼ぎたい」という形が理想です。採用担当は「今すぐいくら必要か」という実態を聞いています。「少しでも」「年金の足しに」という曖昧な答えより、数字を持っている人の方が採用後の条件整合がスムーズで、長く続く傾向があります。
「老後が不安だから働きたい」という動機でも採用されますか?
採用担当として、この動機は悪くないと思っています。不安はパワーになります。大事なのは動機の「明るさ」ではなく「具体性」です。「月にいくら・週に何日」という数字に落とし込まれた不安は、立派な動機です。漠然とした不安ではなく「このままでは月○万円足りない。だから動く」という危機感がある人の方が、実際に長く続くケースを多く見てきました。
採用担当が「好感を持つ動機」と「困る動機」の違いは何ですか?
好感を持つ動機は「月○万円必要で、そのために週○日働きたい」という具体的な数字がある動機です。困る動機は「とにかく何でもいい」「暇だから」が唯一の理由の場合です。「何でもいい」という人は条件が合わないと気づいたときに突然辞めるリスクが高く、採用担当が最も困るパターンです。
面接での服装や礼節は採用にどう影響しますか?
採用担当が読む2軸のひとつです。服装・挨拶・礼節が整っている人は「心のゆとり・自己管理ができている」シグナルになります。逆に服装が雑だと、稼ぎたい金額が明確でも「態度が気になる」という評価になります。年下の面接官やスタッフにも同じ礼節で接することが大切です。
「昔はこうだった」「前の職場では」という話題は面接でNGですか?
採用担当として「どこへ行っても同じことをやる人」と判断します。立ち位置を知っている人は「今の自分」を基準に話します。過去の肩書きや前職のやり方を持ち出すことは、現在の自分を客観的に見られていないサインになります。「今の自分には月○万円必要で、こういう働き方ができる」という現在形の言葉に切り替えることが採用担当との会話を生産的にします。
◯ この記事のまとめ
- 「月にいくら必要か」を明確に答えられないシニアは面接で5割を超える
- 「月3万円の赤字を埋めるために働く」という動機は採用担当が好感を持つ
- 不安から働く動機も悪くない——具体的な数字に落とせているなら立派な動機
- 採用担当が読む2軸は「服装・礼節」と「稼ぎたい額の明確さ」
- 持つべき3つの数字:月○万円・週○日・○歳まで
- 定年はただの中間点——自分の立ち位置を知ることが残りの40年の設計図になる
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