シニアの警備員として働くことを考えている——「きつそう・安そう・自分に向いているかわからない」という3つの不安をまとめて解決するために書きました。
警備の説明会現場で多くの担当者と話し、5年間で3,000名以上のシニア求職者と向き合ってきた採用担当として、業務の実態・給与の相場・面接で見られていること・続く人の条件・何歳まで働けるかまで、一次情報で正直にお伝えします。読み終えると「自分が応募すべきかどうか」の判断ができるはずです。
- シニア警備員が多い理由——データで見る「業界の半数近くがシニア」の実態
- 警備の業務4種類——シニアが現実的に応募できるのは「1号」か「2号」
- 警備員の給与・時給相場——「安い」の正体と60代が知るべき手当の内訳
- 警備員の説明会・面接——採用担当が見た「調べてきたシニア」だけが通る理由
- 警備員に向いている人・向いていない人——採用担当が見た続く人の4条件
- 女性・高齢シニアの警備員——年齢・性別ごとの現実的な判断軸
- 警備会社の選び方——大手・中堅・地場、採用担当目線の判断基準
- 警備員に応募する前に確認すること——求人票の読み方と2024年改正のポイント
- よくある質問
- まとめ——「警備の幅を知ってから応募する」が全て
シニア警備員が多い理由——データで見る「業界の半数近くがシニア」の実態
警察庁「令和6年における警備業の概況」によると、警備員総数は約58万7,848人。そのうち60歳以上が46.9%を占め、年齢別で最も多いのは「70歳以上」(20.9%)です。50代(19.9%)よりも70代以上のほうが多いという、他業種ではあまり見られない構成になっています。単純計算で10万人以上の70代以上が現役で働いていることになります。
シニア警備員がこれほど多い理由は、構造的に説明できます。
FIG.1|シニアと警備業の関係性。人手不足・ITアレルギー層の流入・未経験可の門戸が重なり、シニアが最大の就労層を形成している。
警備は「接客業」とも言われます。礼儀・コミュニケーション・責任感という、社会人経験を積んだシニアが本来持っているスキルが直接活きる仕事です。若い世代が離れがちな一方で、シニアには「来てほしい現場」が多い。これが業界の実態です。
シニアが警備に流れていく3つの経路
「人手不足だから」の一言で片づけられがちですが、採用の現場で見ていると、シニアが警備にたどり着くには具体的に3つの流入経路があります。自分がどれに当てはまるかを知ると、応募すべき業務が見えてきます。
FIG.2|シニアが警備に流入する3つの経路
とくに「営業はやりたくない・数字を追う仕事は苦手・でもPCも不得意」という3つが揃うと、応募できる業界はおのずと絞られ、その先に警備が受け皿として存在します。これはネガティブな話ではなく、警備業界がシニアを受け入れる準備ができているという意味でもあります。
警備の業務4種類——シニアが現実的に応募できるのは「1号」か「2号」
警備業法では、警備業務を4種類に分類しています。この4つを理解しておくことが、シニア警備員として自分に合った求人を選ぶ最初のステップです。「業者シェア」は、その業務を実施している警備会社の割合です。
FIG.3|警備業務4種類とシニア適性。現実的に応募できるのは1号(施設警備)か2号(交通誘導)。
警察庁データでは、警備会社の8割超が交通誘導(2号)を、6割超が施設警備(1号)を手がけています。一方で運搬警備(3号)・身辺警護(4号)は6%程度で、経験者前提の業務です。シニアが現実的に応募できるのは、ほぼ1号と2号に絞られます。
1号警備(施設警備)——シニアが最も多く選ぶメイン業務
施設警備は、ビルや商業施設・病院などの建物内で巡回・受付・出入管理を行う業務です。屋外の気温変化の影響を受けにくく、シフトが固定されやすいため、体力的な安定を求めるシニア警備員に最も向いています。女性のスタッフも増えており、業界全体で最もシニア求人が多い業務です。
ただし、施設によっては夕方以降のシフトが必須の場合があり、「夕方から夜は家族の都合で難しい」というシニアが不採用になるケースも少なくありません。施設警備を検討する際は、シフトの時間帯を最初に確認することが重要です。
施設警備は「どの物件か」で仕事が大きく変わる
施設警備とひとことで言っても、配属される物件タイプによって業務内容・大変さ・人との関わりがまったく違います。応募前に物件タイプを確認しておくことが、入社後のミスマッチを防ぐ最短ルートです。
| 物件タイプ | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 商業施設・モール | 来客が多く対人対応が頻繁。迷子・不審者対応など想定外も多い | コミュニケーションに自信がある人 |
| マンション・住宅系 | 求人は少なめ。居住者が固定で業務が安定。小規模は1人勤務も | 対話が苦手・落ち着いて働きたい人 |
| 病院・学校 | 入退館時間が決まりルーティンが明確。病院は夜勤ありも | 決まった流れが得意な人 |
| オフィスビル | 平日日中に来客集中。土日休みが取りやすい | 土日を家族と過ごしたい人 |
対話が苦手な方でも、巡回中心のマンション物件を選べば続けやすくなります。逆に商業施設は「対人対応の多さ」でしんどさを感じる方が多い傾向です。物件タイプの希望は、応募時や面接時に相談して構いません。
2号警備(交通誘導)——体力がある60代向け・感謝が直接届く仕事
工事現場や道路での車両・歩行者誘導が主な業務です。屋外作業のため夏場の熱中症リスクが高く、体力負担は1号より大きくなります。過去に警備をしていたシニアから「熱中症で倒れた」という話を複数聞いてきたのが正直なところです。
一方で、現在はファン付きベストの着用が標準化されている現場も増えており、以前より環境は改善されています。また、歩行者から「ご苦労様です」と声をかけられたり、子どもが笑顔で手を振ってくれたりと、対面の感謝が直接届く仕事でもあります。施設警備にはない「人と直接つながる喜び」を感じられる業務です。
警備員の給与・時給相場——「安い」の正体と60代が知るべき手当の内訳
先に正直にお伝えします。警備員の時給は、地方都市では全体的に安い水準です。説明会でほかの業種の資料と並べて見ると、その傾向は一目瞭然です。
ただし、「安い」と感じるかどうかは比較対象による部分が大きい。介護施設の厨房や介護ヘルパーの時給が最低賃金ベースで設定されている現状を踏まえると、警備は「身体を使う仕事の中では相対的に悪くない」という評価になります。
FIG.4|シニア向け仕事の時給相対イメージ。警備は「絶対値は安い」が介護・軽作業と比べると相対的に中位。夜勤手当がつく場合は時給換算で上がる。
月給制の求人という選択肢
警備の求人には、時給制だけでなく月給制で募集している案件もあります。「毎月の収入を安定させたい」「時給換算より月収の見通しで動きたい」というシニアには、月給制の求人を優先して探すという方法があります。
求人票の「夜勤手当込み時給」に注意——実質時給の確認方法
警備の求人票で注意すべきポイントが一つあります。時給として表記されている数値の中に、夜勤手当や各種手当が含まれているケースがあることです。
「時給1,200円」の表記をそのまま信じる
求人票に「時給1,200円」と書いてあっても、夜勤手当・深夜割増・危険手当込みの数値である場合があります。日勤のみで応募する場合の実際の時給は、これより低い場合があります。応募前に「この時給は何時間帯・どの条件での数値ですか?」と確認することをおすすめします。
求人票への記載義務は2024年4月施行の改正職業安定法施行規則でより厳格になりましたが、「手当込み表記」自体は違反ではないため注意が必要です。
警備員の説明会・面接——採用担当が見た「調べてきたシニア」だけが通る理由
警備の説明会に関して、採用担当の立場から正直に言います。
付け加えると、警備の説明会はマンション管理や清掃のブースと比べて体感で倍以上の来場者が集まります。「テレビでも街でも見たことがある」「自分にもできそう」というイメージのわかりやすさゆえです。来場者が多いぶん、事前に調べてきた人は上位2割として確実に目立ちます。
説明会で採用担当が見ている3つのこと
警備の説明会では、通常の面接より前の段階で「この人は採用できるか」の判断が始まっています。採用担当が主に見ているのは、以下の3点です。
説明会で採用担当が見ている3つのポイント
- シフトを守れる生活環境か——介護・通院・家族の都合がシフトと両立できるかを、来場時の言動から確認しています
- 最低限のコミュニケーション能力があるか——警備は「接客業」。礼儀と基本的な受け答えができるかを見ています
- 年齢を盾にした「甘え」がないか——「60代だから」「体力的にきつければ休む」という姿勢は、採用担当には一瞬でわかります
なお、警備会社の説明会担当者は、大手・中堅・地場を問わず、全員が背筋を伸ばし制服もパリッとしています。これは「警備=接客」という業界文化の表れです。応募する側にも同じレベルの礼儀が求められると考えておくと安心です。面接での詳しい採用基準は、警備員の面接で採用される人の条件【採用担当が見ているポイント】をご覧ください。
面接で聞いていい質問・タイミングを誤る質問
面接時に確認したい条件がある場合、質問する内容とタイミングには注意が必要です。
| 質問の種類 | 内容 | タイミング |
|---|---|---|
| 聞いていい | 勤務時間・シフトパターン・異動の有無 | 面接中に確認OK |
| 聞いていい | 勤務地の変更の可能性 | 面接中に確認OK |
| 注意が必要 | 怪我・事故時の補償・保険の内容 | 内定後が無難。面接中は「落とされるリスクあり」 |
| 避ける | 最初から「残業はしません」「この曜日は無理」と制限を列挙 | 採用意欲を下げる要因になる |
警備員に向いている人・向いていない人——採用担当が見た続く人の4条件
採用担当の視点から「続く人と辞める人」を分けるのは、体力よりも先に「働く理由」と「性格の傾向」です。警備業界の平均勤続年数は9.5年(全業界平均は約12年)と定着が難しい業界だからこそ、この差がはっきり出ます。
続く人の4条件
- 働く理由が明確——「年金の足しにしたい」「身体を動かし続けたい」など、具体的な動機がある人は続きやすい
- 感謝が直接届く対面仕事を喜べる——子どもの笑顔・通行人の声かけを「ありがたい」と受け取れる人は続く
- 「写し鏡」を理解している——自分から先に挨拶し、相手を気遣える人はストレスをためにくい
- 健康管理が習慣になっている——体調・水分・持病の管理を「言われなくてもできる」人が続く
「諦め癖」「甘え」「休み癖」の三重苦
「少し辛くなったら休めばいい」「年齢のことを考慮してもらえるはず」「続かなかったら辞めればいい」——この3つの思考パターンを持ったまま入社すると、高確率で3ヶ月以内に離職します。警備の現場は、シニアだからといって条件を緩める余裕はほぼありません。逆に、年齢を理由にしないシニアは、それだけで他の応募者と差別化できます。
もし「自分は続く人ではないかもしれない」と感じたら、それは前向きな気づきです。警備員として数年働いた後、安定したシフトの仕事に転職して結果的に稼ぎがよくなった、という方も実際にいます。向いていないと自覚することは、自分に合う仕事を選び直す第一歩です。
女性・高齢シニアの警備員——年齢・性別ごとの現実的な判断軸
女性シニアへ——採用担当が「あえてすすめない」理由
女性シニアの警備への応募については、採用担当として正直にお伝えしています。施設警備の一部では女性スタッフも増えており、「完全に向いていない」とは言いません。ただし、夕方以降の時間帯や体力負担が大きい現場については、向いていない方も多いのが現実です。
女性シニアが警備を選ぶ際の判断軸については、女性シニアの警備員——採用担当が「あえてすすめない」と言う理由で詳しく解説しています。
何歳まで働けるか——80代現役が教えてくれること
警備の説明会で80代の現役警備員の方を直接目にしたことがあります。午前中のみの短時間勤務で、長年同じ現場に勤め続けているケースです。「60代だから遅い」「70代では難しい」という感覚は、警備業界ではあてはまりません。
定年後・高齢での警備の働き方、何歳から応募できて何歳まで続けられるかについては、警備員は何歳まで働けるか【70代80代現役の実態】採用担当が解説で詳しく紹介しています。
警備会社の選び方——大手・中堅・地場、採用担当目線の判断基準
警備会社はその規模によって特性が異なります。どちらが優れているという話ではなく、自分が何を重視するかによって選び方が変わります。
| 規模 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 大手警備会社 | 上場企業が多く雇用条件にシビア。条件の急変更リスクが低い。研修制度が整っている。会社ブランドや社史を前面に出す説明会が多い。 | 採用倍率が高い場合がある。現場の泥臭さは自分から聞きに行く必要がある。 |
| 中堅・地場警備会社 | 地域密着で現場との距離が近い。採用されやすいケースも多い。担当者が現場の話を自分の言葉で熱心に語る。 | 会社によって待遇差が大きい。業務条件の変更リスクは自分で確認が必要。 |
警備会社を選ぶ際に確認すべき5つのポイント
警備会社を選ぶ際に確認すべき5点
- 求人票のシフト時間帯が生活と合うか——時間帯のミスマッチが最多の離職原因
- 勤務地の変更・異動の範囲が明記されているか——2024年4月から求人票への記載が義務化
- 法定研修(新任20時間)が会社負担で実施されるか——費用負担が発生する場合は要確認
- 夜勤手当等の計算方法が明確か——「時給1,200円(各種手当込)」の表記には注意
- 説明会・面接で担当者の印象はどうか——現場の雰囲気は担当者の態度に出る
警備員に応募する前に確認すること——求人票の読み方と2024年改正のポイント
2024年4月施行の改正職業安定法施行規則により、求人票への記載事項が増えました。特に「業務の変更の範囲」「就業場所の変更の範囲」の記載が義務化されており、これを読めば「入社後に別の現場に移動させられるリスク」が事前にある程度わかります。「最初は交通誘導から」と言われた場合、その後施設警備に移るのか、ずっと交通誘導なのか——口頭では曖昧になりがちなので、求人票の記載で確認するのが確実です。
応募前に求人票で確認すべき6項目
- 勤務時間帯(日勤のみ/夜勤あり/シフト制の詳細)
- 就業場所の変更の範囲(「転居を伴う異動なし」等の記載を確認)
- 業務の変更の範囲(「警備業務のみ」か「関連業務を含む」か)
- 時給・給与の内訳(手当込みかどうかを確認)
- 試用期間の有無と条件(試用期間中の待遇が変わる場合がある)
- 社会保険の適用条件(週の労働時間による加入要件を確認)
出典:厚生労働省「令和6年4月より、募集時等に明示すべき事項が追加されます」
よくある質問
60代・70代でも本当に警備員として採用されますか?
はい、採用されます。警察庁「令和6年における警備業の概況」によると、警備員全体の60歳以上比率は46.9%、70歳以上が20.9%と最大の年齢層を占めています。採用現場の実感としても、年齢を理由に門前払いされることはほぼありません。実際に80代で現役の方にも会っています。重要なのは年齢ではなく「シフトを守れる生活環境」と「最低限のコミュニケーション能力」です。
警備員の仕事はやはりきついですか?
業務区分によって大きく違います。1号警備(施設警備)は屋内中心でシフトも固定しやすく、体力的な負担は比較的軽め。2号警備(交通誘導)は屋外作業で夏場の熱中症リスクや天候の影響を受けやすく、負担は大きめです。「続く人」と「辞める人」を分けるのは体力よりも「働く理由の明確さ」と「外的ストレスへの耐性」です。詳しくは警備員はきついのかで解説しています。
未経験・無資格でも警備員になれますか?
なれます。警備員の多くは未経験・無資格で応募できます。入社後に警備業法で定められた新任研修(20時間以上)を会社が実施するため、応募時点で資格や経験は基本的に不要です。シニア向け求人でも未経験OKの案件が大半で、業界全体が慢性的な人手不足のため門戸は広く開かれています。
警備員の時給は安いと聞きますが実態はどうですか?
地方都市では絶対値として安めの水準なのは事実です。ただし介護厨房や軽作業と比較すると相対的に中位で、夜勤手当がつく場合は時給換算で上がるケースもあります。注意したいのは求人票の「時給◯円(各種手当込み)」表記。日勤のみで応募した場合の実時給は表示より低い場合があるため、応募前に時給の内訳を確認することをおすすめします。月給制の求人を選ぶ方法もあります。
女性シニアでも警備員として働けますか?
施設警備の一部では女性スタッフも増えており、働けないわけではありません。ただし採用担当の立場では「あえてすすめない」場合があります。夕方以降のシフトや体力負担の大きい現場については向かない方も多く、施設・時間帯の選び方を慎重にする必要があります。詳しくは「女性シニアの警備員」をご覧ください。
何歳まで警備員として働き続けられますか?
明確な上限はありません。説明会の現場で80代の現役警備員に会ったことがあります。午前中のみの短時間勤務で、長年同じ現場に勤め続けるケースです。「60代だから遅い」「70代では難しい」という感覚は警備業界ではあてはまりません。短時間勤務という選択肢を組み合わせれば、80代でも現役で働き続けられる業界です。詳しくは警備員は何歳まで働けるかで紹介しています。
まとめ——「警備の幅を知ってから応募する」が全て
◯ この記事のまとめ
- 警備員の60歳以上比率は46.9%、70歳以上が最大年齢層。シニアが活躍できる数少ない業種の一つ
- シニアが警備に流れる経路は「PCが苦手」「夜勤に慣れている」「選択肢が絞られた」の3つ
- 業務は4種類あるが、シニアが現実的に応募できるのは「1号(施設警備)」か「2号(交通誘導)」
- 施設警備は物件タイプ(商業・マンション・病院・オフィス)で仕事が大きく変わる。物件選びが重要
- 給与は「軒並み安い」が正直なところ。ただし介護・厨房と比較すると相対的に中位。月給制の選択肢もある
- 求人票の「夜勤手当込み時給表記」に注意。実質の日勤時給を確認してから応募を判断する
- 続く人の条件は体力より「働く理由の明確さ」「対面の喜び」「写し鏡の理解」「健康管理」

