「警備はきついらしい」——この言葉を聞いたことがある人は多いと思います。炎天下の交通誘導、夜勤のある施設警備。体力に不安があるシニアにとっては、応募前から腰が引けてしまう仕事でもあります。
ただ、採用担当として複数の警備員と直接話してきた経験から言うと、「きつさの種類」は業務によって大きく違います。そして、続いている人と辞める人には、体力以外の明確な差があります。この記事ではその分かれ目を正直に解説します。
警備員は本当にきついのか——「イオンの駐車場」イメージと現実のギャップ
警備員に対してシニアが持つイメージは、だいたい決まっています。「夏の炎天下、駐車場で旗を振っている人」——おそらく交通誘導のイメージです。このイメージで「体力的に無理」と判断してしまうと、施設警備や他の選択肢を見落とすことになります。
警備の仕事は大きく4種類あります。施設警備(1号)、交通誘導(2号)、運搬警備(3号)、身辺警護(4号)。シニアが現実的に応募できるのは施設警備と交通誘導のほぼ2択です。そしてこの2つは、きつさの種類がまったく違います。
「警備はきつい」という一言でまとめてしまうのは、「コールセンターはクレームが多い」と言うのと同じくらい大雑把な話です。業務の種類と自分の体力・生活リズムがどう合うかを具体的に考える必要があります。
業務別「きつさの種類」——施設警備と交通誘導で何が違うか
施設警備と交通誘導のきつさを具体的に比較します。どちらを選ぶかは、自分の生活リズムと体調管理の得意・不得意次第です。
施設警備のきつさ——シフトが「壁」になる
施設警備は建物内での業務が中心です。ビル・商業施設・マンションのエントランスや監視室で、巡回・受付対応・設備確認などをおこないます。天候に左右されないぶん、体力的なハードルは交通誘導より低い傾向があります。
ただし、施設警備には「夕方以降のシフト」という壁があります。建物の閉鎖時間・夜間対応が必要な施設は、夕方や深夜のシフトが発生します。採用担当として説明会で何度も見てきた不採用のパターンで最も多いのは、「シフトが家族の都合と合わない」というものです。特に家族の介護や送迎がある女性シニアは、夕方以降に動けないケースが多く、このシフトの壁で折り合いがつかないことがあります。
交通誘導のきつさ——体力勝負、我慢強さが問われる
交通誘導は屋外での立ち仕事です。建設現場・道路工事・イベント会場周辺での車両・歩行者誘導が主な業務になります。シニアが抱く「警備員 = 炎天下の旗振り」のイメージはほぼこの業務です。
採用担当として警備員の面接や説明会での話を通じて、交通誘導での熱中症の話は複数人から直接聞いています。「今はファン付きベストなどの対策グッズがあるから昔よりはマシ」という声もありましたが、それでも熱中症は決してゼロではありません。体力に自信があっても、気温・湿度・作業環境によっては思わぬダメージを受けます。
参考データ
警察庁「令和6年警備業の概況」によると、警備員全体(58万7,848人)のうち60歳以上が全体の約44%を占めています。多くのシニアが実際に警備の現場で働いていることを示すデータですが、業務別・年齢別の詳細な定着率は公表されていません。
採用担当が複数の警備員から聞いた「きつさのリアル」
説明会・面接・採用後のやり取りを通じて、複数の警備員から直接話を聞く機会がありました。特に印象に残っているのは交通誘導の経験者から聞いた話です。
「夏場に熱中症で動けなくなった」「同僚が救急搬送されたのを見た」——これらは一人からではなく、複数の経験者から別々に聞いた話です。ファン付きベストが普及した今でも、長時間の屋外作業で熱中症リスクがゼロになったわけではありません。体調管理に自信がある人でも、夏場の交通誘導は想像以上のダメージを受けることがあります。
一方で、長く続いている人たちからは「外で働いているほうが気持ちいい」「ありがとうと言ってもらえる」という声もありました。子どもに笑顔で手を振ってもらえた、暑い中ご苦労様と声をかけてもらえた——感謝が直接届く対面仕事の手応えは、施設内のオフィスワークでは得られない独特の充実感だという話は複数人から聞いています。
それでも続いている人の共通点
体力に自信がなくても、60代・70代で警備員として長く活躍している人は実際にいます。では何が続く人と辞める人を分けるのか。採用担当として見てきた範囲で整理します。
「働く理由」の有無が一番の差
採用担当として長く見てきた中で感じるのは、「なぜ働くのか」が自分の言葉で言える人は、多少きつくても続きやすいということです。「健康のために体を動かしたい」「社会との接点を持ち続けたい」「子どもや孫に頼りたくない」——理由の内容より、理由があること自体が続く力になります。
一方で、「とりあえず仕事でもするか」という温度感でスタートした人は、最初の壁(シフトのきつさ・天候・体力消耗)で気持ちが折れやすい傾向があります。
「我慢強さ」は年齢より性格
60代・70代でも交通誘導を続けている人はいます。共通しているのは、外的ストレス(天候・通行者の態度・長時間の立ち仕事)に対して「まあそういうものだ」と流せる気質です。完璧主義だったり、納得いかないことが続くと気持ちが落ちやすいタイプは、我慢を強いられる場面で消耗しやすいかもしれません。
警備会社が説明会で必ず言う言葉に「警備は接客です」というものがあります。通行者への丁寧な対応、挨拶、笑顔——それが自然にできる人は、利用者から感謝される場面も多く、それがモチベーションになって続きやすくなります。
きつさと向き合うか、別の仕事に切り替えるかの判断軸
「警備に挑戦してみたいが、続けられるか不安」という人のために、判断の基準を整理します。
警備(特に交通誘導)を選ぶ前の自己チェック
- 夏場に屋外で長時間立ち続けることが、今の自分の体力でできるか
- 体調が少し悪い日でも、シフトを守れる自信があるか
- 通行者・近隣住民への丁寧な対応が自分に合っているか
- 夜勤・夕方シフトが家族の生活と折り合いがつくか(施設警備の場合)
- 「なぜ働くのか」が自分の言葉で言えるか
採用担当として実際に面接で聞いた事例として、交通誘導で体を壊した後、安定シフトの別職種に転職して、結果的に稼ぎが上がったケースがあります。警備の体力的なきつさに気づいた段階で、無理に続けようとするより、他の選択肢を検討する判断も正しいといえます。
警備員全体に占める60歳以上の比率は約44%です(警察庁令和6年調査)。体力の衰えを感じながらも続けているシニアが多くいる事実は、「きつい=無理」ではないことを示しています。ただし、「続けられるかどうか」は体力よりも、業務選択・シフト設計・働く理由の有無で決まることが多いのも事実です。
「体力があるから大丈夫」だけで交通誘導を選ぶ
体力に自信があっても、夏場の熱中症リスクや生活リズムの乱れで体調を崩すケースは少なくありません。また、施設警備のシフト問題(夕方以降・夜勤)を事前に確認せずに応募し、採用後に「実は家族の都合で夜は動けない」となるパターンも多い。体力の確認だけでなく、シフト詳細・業務場所・夜勤有無を面接前に必ず確認してください。
まとめ
この記事のまとめ
- 「警備はきつい」のイメージの多くは交通誘導に由来する。施設警備と交通誘導では、きつさの種類がまったく異なる
- 交通誘導のきつさの主因は屋外・長時間立ち仕事・熱中症リスク。採用担当として複数の経験者から熱中症の話を直接聞いている
- 施設警備のきつさの主因はシフト。夕方以降・夜勤が家族の都合と合わない場合、不採用になるケースが多い
- 続く人の特徴は「体力」よりも「働く理由の明確さ」「外的ストレスへの我慢強さ」「人への丁寧な対応が自然にできること」
- 体調が少し悪い日でも休みにくい場面がある交通誘導は、体調管理に自信がない人には向かない
- 警備員全体の約44%が60歳以上(警察庁令和6年)。きつい仕事だが、続けているシニアは多い。業務選択・シフト設計が鍵
警備員の求人を探している方へ
施設警備か交通誘導か、夜勤の有無、シフトの時間帯——これらを比較した上で応募先を絞ってください。Indeed・求人ボックス・バイトルで「警備 シニア」「施設警備 60代」などで検索すると、業務内容・勤務時間帯を確認しながら比較できます。

