「年金に副業を足して、もう少し収入を増やしたい」——60代・70代のシニアにとって、これは現実的な選択肢でしょうか。
インターネットには「シニアにおすすめの副業10選」が溢れています。でも採用担当として年間1,000名以上のシニア求職者と向き合ってきた立場から言わせてください。Wワークで稼ごうとするシニアは、100%続きません。その理由と、本当にうまくいく年金+収入の設計を、正直にお伝えします。
Wワークへの採用担当の本音——「絶対に言うことがある」
「本業として働きながら、副業もしたい」というシニアが面接に来ることがあります。採用担当として、その言葉を聞いたときに必ず伝えることがあります。
「若いころはできた」という感覚が残っている方ほど、無理なスケジュールを組みがちです。でも60代・70代の体は、無理に対して20代・30代とはまったく違う反応をします。一度崩れると回復に時間がかかり、そのまま就労継続が難しくなるケースが多い。
「2つの雇用元に誠実でいられるか」という問題
体力面だけではありません。採用担当として、もう一つ必ず伝えることがあります。
2つの仕事に「サブ・メイン」の優先順位をつける
Wワークで2つの企業に勤めるとする。どちらかに優先順位をつけることは、どちらの雇用元にも不誠実です。「こっちの都合であっちを休む」「あっちの都合でこっちを休む」もそう。自分で決めたことは自分で守り通すしかない。シフト順守、甘えは許されない。それができますか?と採用担当として問います。
Wワークが「絶対にダメ」と言いたいわけではありません。軽い副業(短時間・不定期・体への負荷が少ないもの)と本業を組み合わせることは可能です。ただ「稼ぐために両方フルに働く」という発想は、シニアには現実的ではないということを、採用担当として正直にお伝えしたいのです。
なぜシニアに限って「100%続かない」と言えるのか。それは体の回復力の違いです。20〜30代なら無理なシフトを数週間続けても乗り越えられることがあります。しかし60代・70代は、一度体に無理が来ると回復に時間がかかり、その間にシフトの穴が開き、「申し訳ないから休みます」が積み重なって最終的に職場を去ることになります。採用担当として、そのパターンを何度も見てきました。
「副業で月に数万円稼いでいます」というシニアが面接に来ることはあるか。採用担当として見てきた実態をお伝えします。
厳しい言葉に聞こえるかもしれませんが、これはシニアの現実を正直に伝えたいからです。
副業にはいくつかの種類があります。「スキルや経験を活かして継続的に稼ぐもの」と「単発・短時間で少額を得るもの」は性質がまったく違います。
シニアに現実的な副収入の形
- 単発の短時間バイト(イベントスタッフ・試験監督・交通量調査など)
- スキルを活かした単発仕事(元教員なら家庭教師、元料理人なら料理代行など)
- フリマアプリ・不用品売却(継続的な「副業」ではなく整理の範囲)
- シルバー人材センターを通じた軽作業・草刈り・清掃(月数千〜2万円程度)
これらは「副業で生活を支える」というより「少し足す」という発想です。年金と本業の収入を軸に設計して、その周辺に小さな収入源を置く——これがシニアにとって現実的な設計です。
総務省の就業構造基本調査によると、65歳以上の副業保有者の割合は全体として低く、多くのシニアが「本業1本」で収入を設計しています。インターネット上に溢れる「シニア向け副業特集」は、実際にはシニアの就労実態とかけ離れている場合が多い。現実として、採用担当の面接現場で「副業で稼いでいる」というシニアに会ったことはほとんどありません。
「年金を受け取りながら働きたいのですが」と面接で話すシニアは多くいます。採用担当としてどう受け取るか、正直に言います。
年金の細かい計算は自己管理。面接では勤務条件だけシンプルに伝えましょう。
「在職老齢年金(働きながら年金を受け取る際に、一定以上の収入で年金が減額される制度)の計算をどうすればいいか」まで面接で話し込んでくる方がいます。採用担当として言えることは、「それは自分で管理してください」の一言です。面接はそういう相談の場ではありません。
面接で伝えるべきは「月◯時間・週◯日で働きたい」というシンプルな条件だけです。その背景に年金調整があるかどうかは関係ない。採用担当はあなたの年金の計算を一緒にする役割ではありません。
在職老齢年金について知っておくべきこと
60〜64歳で働く場合、厚生年金の被保険者であれば収入と年金の合計が一定額(2025年時点で月50万円)を超えると年金が減額される場合があります。65歳以上は別の基準が適用されます。詳細は日本年金機構のウェブサイトまたは最寄りの年金事務所で確認してください。採用面接で聞くのではなく、事前に自分で把握しておくことが大切です。
うまくいっている人の共通点——「自分で把握している」
年金を受け取りながら働いて、収入と生活を安定させているシニアに共通していることがあります。
現役世代の主婦が「扶養範囲内で働く」ために月収を調整するのと同じ発想です。自分の年金受給額・生活費・必要な月収を把握したうえで仕事を選んでいる人は、無理な働き方をしません。結果として長く続きます。
「いくら必要か」を把握してから仕事を選ぶ。これが年金世代の就活の正しい順序です。
「できるだけたくさん稼ぎたい」という発想より、「月◯万円必要だから、この条件の仕事を探す」という発想のほうが、仕事選びも面接も、そして入社後の継続もうまくいきます。
年金世代の就活は「最大化」ではなく「最適化」です。いくら稼げるかではなく、いくら必要かを起点にする。そのシンプルな発想の転換が、60代・70代の働き方をずっと楽にしてくれます。採用担当として、そういう「自分の数字を持っている人」は面接でも非常に印象が良く、入社後も安定して続く傾向があります。
年金をもらいながら働くと年金が減らされると聞きました。どうすればいいですか?
在職老齢年金という制度で、一定以上の収入がある場合に年金の一部が支給停止になる場合があります。ただし影響が出る収入水準は比較的高め(2025年時点で厚生年金被保険者の場合、月収+年金額の合計が50万円超)のため、多くの方には大きな影響はありません。詳しくは日本年金機構のウェブサイトか年金事務所に確認してください。採用面接でこの話を持ち出す必要はありません。
週2〜3日の短時間なら、Wワークは大丈夫ですか?
体への負担が少なく、2つの職場のシフトが明確に分離されているなら、不可能ではありません。問題になるのは「フルタイム×フルタイム」や「休日ゼロ」になるような組み合わせです。また2つの雇用元どちらにも誠実であり続けることが条件です。「メインとサブ」という感覚で片方をないがしろにし始めると、どちらも続かなくなります。
シルバー人材センターとパートを掛け持ちするのはどうですか?
シルバー人材センターは原則として「就業時間の上限」が設けられており(月10日・週20時間以内が目安)、短時間・単発中心の設計です。そのため通常のパートとの相性はよく、無理のない掛け持ちがしやすいです。ただし社会保険・雇用保険の扱いが通常のアルバイトと異なります。事前に各センターの規則を確認してください。
「副業解禁」している会社でなければWワークはできませんか?
就業規則で副業・兼業を禁止している企業は今も多くあります。応募前に求人票または面接で確認することをおすすめします。無断でWワークをして就業規則違反となった場合、解雇リスクがあります。「この範囲で働きたい」という条件とともに、Wワークの意向があれば正直に伝えることが長期的に安全です。
副業でおすすめのものはありますか?
採用担当の立場から言うと、「シニアにおすすめの副業」よりも「自分の生活に必要な金額を把握して、本業で賄う設計」を先に考えることをおすすめします。そのうえで少し余裕が欲しい場合は、シルバー人材センターの単発仕事・試験監督・イベントスタッフなど、体への負荷が少なく不定期でできるものが現実的です。「稼ぐための副業」より「補完する副収入」という発想に切り替えると長続きします。
まとめ:「稼ぐ設計」より「必要額の設計」を
この記事のまとめ
- フルタイム×Wワークで稼ごうとするシニアは、採用担当の観察では100%続かない
- 「副業でキャリアを積む・収入を伸ばす」はシニアには現実的ではない
- 軽い副収入(単発・短時間・シルバー人材センター等)は年金+本業の補完として有効
- 年金の細かい計算は自己管理。面接では「月◯時間働きたい」という条件だけ伝えればOK
- うまくいく人の共通点は「自分に必要な月収を把握して、それに合う仕事を選ぶ」こと
「副業で稼ぐ」ではなく「必要な金額を把握して、過不足なく働く」——この発想の転換が、60代・70代の就労を長続きさせる最大のポイントです。
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参考データ
- 日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」— 日本年金機構(2025年時点)

