老後の月3万円赤字を働いて埋める——採用担当が見た「立ち位置を知っている人」の条件

老後の月3万円赤字を働いて埋める方法。採用担当が見た立ち位置を知っている人の条件 仕事ラボ

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ぐっさん|シニア採用責任者

  • シニア採用責任者として複数職種・複数センターの採用を管轄
  • 採用単価60%削減・年間140名採用実績
  • 年間1,000名以上のシニア求職者と向き合ってきた

「年金だけでは月に3〜5万円足りない。だから働きたい」——この動機を採用担当として聞いたとき、私は正直なところ好感を持ちます。自分の生活実態を数字で把握している人は、採用した後も長く続く傾向があるからです。

しかし問題は、そういう人ばかりではないことです。採用担当として年間1,000名以上のシニア求職者と向き合ってきた経験から言えば、「月にいくら必要か」を答えられないシニアは5割を超えます。この記事では、老後の月3万円赤字を「働いて埋める」という選択が採用担当の目にどう映るか、そして「立ち位置を知っている人」が何をしているかを正直にお伝えします。

「なぜ働くのか」を答えられないシニアが面接に来る

採用担当として面接の場で必ず確認することがあります。「今回、なぜ仕事を探そうと思ったのですか?」——この質問に対する答えが、その後の採用判断に大きく影響します。

一番多い答えは「体を動かしたい」「社会とつながっていたい」「暇だから」です。これ自体は悪くありません。しかし続けて「月にどれくらい稼ぐことが目標ですか?」と聞くと、明確に答えられない人が多い。「とにかく少しでも」「年金の足しに」——この答えが返ってくる割合は、肌感覚で5割を超えます。

採用担当からひとこと
「けっこう多い。5割以上じゃないかな? なのでそういう人が全員ダメだとは思わない。でも自分の人生に責任を持てるのはこれまた自分だけ。そうじゃない人は人のせい、経営者のせい、会社のせい、政治のせい、勝手に敵を大きくしていくよね。そして文句だけ言って何も変わらない。他責は何も生まない。だからこそ自分の人生を本気で考えたほうがいい。」

「他責」と「自責」——採用担当が面接で読み取るもの

「前の会社が悪かった」「景気が悪い」「政策のせいで年金が少ない」——こういった言葉が面接で出てくる人と、「自分にはこれだけ必要で、そのためにこう働きたい」と話せる人では、採用担当の目に映る像が全く違います。

他責型の人が必ずしも仕事ができないわけではありません。しかし採用担当の立場で言えば、職場で何か問題が起きたとき「あの人のせい」「会社のせい」になりやすい人を優先的に採用することはできません。採用は職場全体への影響を考えて行うものだからです。

採用担当からひとこと
「採用する人は採用される側の人生を変える責任がある——そう思っています。だからこそ、長く続けられる人を採用したい。続かない人を採用することは、その人の時間も職場の時間も奪うことになる。」

採用担当もまた、採用の結果に責任を持っています。だからこそ、自分の人生を自分ごととして考えられる人を選びたい。「月3万円の赤字を自分で計算して、埋めるために来た」という人は、その時点で採用担当の信頼を得ています。

「月3万円の赤字」を自分で計算しているか

「老後の赤字」という言葉は漠然と使われがちですが、自分の数字として把握している人は少数派です。まず現実のデータを確認しておきます。

総務省の家計調査(2023年)によると、65歳以上の無職夫婦世帯の平均的な月間収入は約24万円(主に年金)、支出は約28万円で、月約4万円の赤字が生じています。単身世帯では収入約13万円に対して支出約15万円、月約2万円の赤字です。

この「月3〜5万円の赤字」は統計的に見ても現実に即した数字です。そしてこの赤字を30年間放置すると、累計で1,000万円を超える補填が必要になります。「働いて埋める」という選択は、その現実への具体的な対応です。

「立ち位置の理解」とは何か——採用担当が見る2軸

採用担当として、シニア求職者の「立ち位置の理解度」を読む際に使っている軸があります。

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採用担当が読む「立ち位置理解」の2軸 軸① 服装・礼節・挨拶 「心のゆとり・自己管理ができているか」を示すシグナル 軸② 稼ぎたい金額の明確さ 「自分の生活実態を把握しているか」を示すシグナル ○ 両方整っている 服装◎・稼ぎたい額が明確 → 採用担当が最も信頼する △ 礼節はある 服装◎・金額は曖昧 → 印象は悪くない・条件確認 △ 目的は明確 金額明確・服装や礼節が雑 → 動機は買う・態度が気になる × 両方不足 服装雑・金額も曖昧 → 行き当たりばったりと判断
採用担当からひとこと
「2軸あると思っていて、挨拶や礼儀などを心得ていない人、かついくら稼ぎたいですか?という質問で明確に答えられない人は行き当たりばったりな人だと思う。逆に、服装や礼節をきちんとしている人はそれなりにゆとりがあるので、いくら稼ぎたいの質問にあいまいな返答でもそこまで気にならない。人は見た目で判断できない、判断したらダメだって言うでしょ?これ大嘘。人は見た目で判断されるよ。」

「資産というと大げさかもしれないけど、立ち位置としてね」——この言葉が示すように、立ち位置の理解とは大げさな資産管理ではありません。「自分は月にいくら必要で、何日・何時間なら無理なく働けるか」という基本の数字を持っているかどうかです。それが採用担当との「建設的な話」の出発点になります。

ところで——仕事を探す前に、もう一つ手を打てることがあります。家の中に眠っている「資産」の棚卸しです。骨董品、食器、カメラ、レコード。昭和の家には意外と値がつくものが残っています。月3万円の赤字を働いて埋めることと並行して、手元の資産を確認しておくことも、立ち位置を知ることのひとつです。

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採用担当が「好感を持つ」動機・持たない動機

「月3〜5万円の赤字を埋めるために働きたい」——この動機を採用担当として聞いたとき、私は率直に好感を持ちます。その理由を説明します。

◯ 採用担当が「月3万円赤字を埋めたい」動機を好む理由

具体的な数字を持っている人は、自分がどれくらい働けるか・無理なく続けられるかを長期目線で考えられます。「月3万円なら週2日・1日4時間で足りる」と分かっている人は、過剰に仕事を詰め込んで体を壊すリスクが低い。採用担当として「建設的な話をしやすい」のです。

「不安ドリブン」の動機は悪いことではない

一方で、「老後が不安だから働かなきゃいけない」という不安ベースの動機を持つ方も多くいます。これを採用担当としてどう見るか——正直に言えば、悪くないと思っています。

採用担当からひとこと
「続くと思います。ネガティブは原動力になる。ポジティブシンキングは推奨するし、そうありたいと思ってる。でも世の中のほとんどの人はそういう思考は持てない。人はどうすれば得をするかではなく、どうすれば損をするかというネガティブ感情にこそ強く反応するです。ネガティブはパワーになる。中途採用や新卒採用と見ている軸が違うので、そういう不安を具体的に持つことは悪いことじゃないと思う。ポジティブです!といって実は何も考えてない、危機管理力がない人とは違うと思う。」

「前向きに働きたい!」という人より、「このままでは困る。だから動く」という危機感がある人のほうが、実際に長く続くケースを採用担当として多く見てきました。大事なのは動機の「明るさ」ではなく「具体性」です。漠然とした不安ではなく、「月にいくら・週に何日」という具体的な数字に落とし込まれた不安は、立派な動機です。

採用担当が困る動機——「とにかく何か」「暇だから」

逆に、採用担当として正直に言えば困る動機があります。「とにかく何でもいいから働きたい」「家にいても暇だから」——これが唯一の動機として出てくる場合です。

悪意があるわけではありません。ただ、条件の話になると「何でもいいです」「おまかせします」という答えが続きます。採用担当はあなたの生活設計の代わりはできません。「何でもいい」という人を採用すると、条件が合わないと気づいたときに突然辞めていくリスクが高くなります。採用担当として、それが一番困ります。

「立ち位置を知っている人」と「知らない人」の違い

採用担当として見てきた「立ち位置を知っている人」には共通点があります。それは自分の生活を数字で把握していることだけではありません。

◯ 「立ち位置を知っている人」の5点チェック

  • 「月○万円必要・週○日・1日○時間」という数字が明確に答えられる
  • 説明会・面接での服装・挨拶・礼節が整っている
  • 「今の自分」を基準に話す(過去の肩書きや前職の話を持ち出さない)
  • 条件が合わない場合に「それなら別の仕事を探す」と判断できる
  • 年下の面接官・スタッフにも同じ礼節で接している

採用担当自身も「立ち位置」を考え続けている

採用担当として毎日シニア求職者と話しながら、私自身も同じ問いと向き合っています。

採用担当からひとこと
「もちろん考えている。そのために何歳までにどれぐらいの資産が欲しい。そのためにはどれぐらい稼ぐ必要がある。でも今の会社ではそれはかなわない。いまのままじゃ。ではどうする? 転職?出世して自分が会社を変える?それとも独立する?リスクヘッジは?常に考えてる。」

「自分の立ち位置を考える」とは、特別な人間だけがやることではありません。採用担当も、現役の会社員も、60代のシニア求職者も——「今自分はどこにいて、どこへ向かうのか」を問い続けることが、建設的な動き方につながります。

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「立ち位置を知っている人」が持つ3つの数字 ① 月にいくら必要か 年金収入と月の支出から「不足分」を自分で計算する → 動機の根拠・採用担当との話の出発点になる ② 週に何日・何時間働けるか 体力・介護・通院などを考慮して「無理なく続く」日数を把握する → 条件整合の根拠・過剰就業による早期離職を防ぐ ③ いつまで働くか 「70歳まで」「体が動く限り」など目安があると話しやすい → 長期雇用の判断材料・職場への安心感につながる この3つを持って来るだけで、採用担当との会話が変わる

この3つの数字を持って面接に来る人は、採用担当にとって「話しやすい人」です。逆に言えば、この数字がない人との会話は「条件はどうしますか?」「何でもいいです」という堂々巡りになりやすい。面接の時間は限られています。数字を持って来ることが、採用担当との会話を生産的にする最短の方法です。

採用担当が伝えたいこと——定年はただの中間点

最後に、採用担当として一番伝えたいことをお伝えします。

「老後の月3万円赤字を働いて埋める」という発想は、後ろ向きな選択ではありません。むしろ現実を直視して、自分の手で対応しようとする前向きな選択です。採用担当として、そういう人を採用したいと思っています。

採用担当からひとこと
「定年後、これはもはや人生においてただの中間点でしかありません。」

60歳で定年を迎えても、人生100年時代において残りの時間は40年以上です。「定年=終わり」ではなく「定年=折り返し地点」。その先をどう設計するかが問われています。

月3万円の赤字を把握している人は、その設計をすでに始めています。「自分には月3万円が足りない。だから週2日・4時間働く」——この計算ができている人は、採用担当の目に「自分の人生を真剣に考えている人」として映ります。

「稼ぎたい額を答えられないシニアが5割」という現実の中で、あなたが数字を持って来ることはそれだけで差別化になります。特別なスキルも、輝かしい経歴も必要ありません。「自分の立ち位置を知っている」——それだけで採用担当との会話は変わります。

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「昔はこうだった」「前の職場では」——これはどこへ行っても失敗する

自分の立ち位置を知っている人は「今の自分」を基準に話します。「以前は部長だった」「前の会社ではこのやり方だった」という言葉が面接で出てくる人は、採用担当として「どこへ行っても同じことをやる人」と判断します。そうじゃないと思うなら、いつになってもヘッドハントされるはず——採用担当として、それが正直な見方です。「昔はこうだった」が口癖になっている方は、今日からやめてみてください。

よくある質問

「月にいくら必要か」を面接でどう答えればいいですか?

具体的な数字で答えることが最善です。「年金が月○万円で、生活費が月○万円かかるので、月○万円ほど稼ぎたい」という形が理想です。採用担当は「今すぐいくら必要か」という実態を聞いています。「少しでも」「年金の足しに」という曖昧な答えより、数字を持っている人の方が採用後の条件整合がスムーズで、長く続く傾向があります。

「老後が不安だから働きたい」という動機でも採用されますか?

採用担当として、この動機は悪くないと思っています。不安はパワーになります。大事なのは動機の「明るさ」ではなく「具体性」です。「月にいくら・週に何日」という数字に落とし込まれた不安は、立派な動機です。漠然とした不安ではなく「このままでは月○万円足りない。だから動く」という危機感がある人の方が、実際に長く続くケースを多く見てきました。

採用担当が「好感を持つ動機」と「困る動機」の違いは何ですか?

好感を持つ動機は「月○万円必要で、そのために週○日働きたい」という具体的な数字がある動機です。困る動機は「とにかく何でもいい」「暇だから」が唯一の理由の場合です。「何でもいい」という人は条件が合わないと気づいたときに突然辞めるリスクが高く、採用担当が最も困るパターンです。

面接での服装や礼節は採用にどう影響しますか?

採用担当が読む2軸のひとつです。服装・挨拶・礼節が整っている人は「心のゆとり・自己管理ができている」シグナルになります。逆に服装が雑だと、稼ぎたい金額が明確でも「態度が気になる」という評価になります。年下の面接官やスタッフにも同じ礼節で接することが大切です。

「昔はこうだった」「前の職場では」という話題は面接でNGですか?

採用担当として「どこへ行っても同じことをやる人」と判断します。立ち位置を知っている人は「今の自分」を基準に話します。過去の肩書きや前職のやり方を持ち出すことは、現在の自分を客観的に見られていないサインになります。「今の自分には月○万円必要で、こういう働き方ができる」という現在形の言葉に切り替えることが採用担当との会話を生産的にします。

◯ この記事のまとめ

  • 「月にいくら必要か」を明確に答えられないシニアは面接で5割を超える
  • 「月3万円の赤字を埋めるために働く」という動機は採用担当が好感を持つ
  • 不安から働く動機も悪くない——具体的な数字に落とせているなら立派な動機
  • 採用担当が読む2軸は「服装・礼節」と「稼ぎたい額の明確さ」
  • 持つべき3つの数字:月○万円・週○日・○歳まで
  • 定年はただの中間点——自分の立ち位置を知ることが残りの40年の設計図になる

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著者:ぐっさん|シニア採用責任者

EDITOR IN CHIEF

シニア採用責任者として複数職種の採用・採用説明会を管轄。年間1,000名以上のシニア求職者と向き合ってきた。採用単価60%削減・年間140名採用・離職率38%→18%改善の実績。上場企業の採用戦略に貢献~現役責任者。

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