「年金がほとんどないから」59歳から始めた大型ビル清掃、66歳の今

実体験ラボ

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監修|ぐっさん(シニア採用責任者)

「子育てが一段落したけれど、この年齢で職歴も浅い自分に何ができるだろう」。そんな気持ちで一歩を踏み出せずにいる方に読んでほしい体験談です。今回お話を伺ったのは、大阪府で大型オフィスビルの清掃として働くマサコさん(仮名・66歳)。長く主婦として過ごし、59歳ごろに未経験から清掃の世界へ入って、7年になります。

週5日・1日6時間のパート勤務で、時給は1,300円。年金がほとんどないという事情を抱えながらも、「無理をしないペース」で働き続けています。ご本人の言葉に、シニア採用に携わってきた私が「採用する側から見るとどうか」という解説を添えてお届けします。

※この記事は、当サイト「実体験ラボ」のオンラインでのインタビュー(2026年7月実施)をもとに、ご本人の掲載同意を得て構成しています。お名前は仮名、勤務先が特定される情報は伏せています。記事内の写真はイメージです。

オフィスビルで清掃をするシニア女性の後ろ姿
大型オフィスビルで清掃を担当するマサコさん(※写真はイメージです)

子育てが一段落|59歳で選んだオフィスビルの清掃

VOICE

子どもたちが全員家を離れて、最初のうちは主婦をしながら娘の子育てを手伝っていました。でも、だんだん時間をもて余すようになって、外に働きに出ることにしたんです。

ただ、年齢的にも職歴的にも浅かったので、何ができるだろうと迷いました。そんなときに、未経験でこの年齢でも採用されやすいと聞いて、清掃の仕事に応募したんです。知り合いに紹介してもらって、面接はオンラインでの面談でした。

採用担当より

「職歴が浅くて、この年齢で何ができるか分からない」。主婦として長く過ごしてきた方が仕事を探すとき、最初にぶつかるのがこの不安です。マサコさんが選んだ清掃は、まさにその不安に対して間口が広い職種です。特別な資格や経歴よりも、こつこつ働ける安定感が評価されます。

もうひとつ注目したいのが「知り合いの紹介」という入り口です。採用する側から見ると、紹介での応募は、職場の雰囲気や仕事内容をある程度分かったうえで来てくれるので、入ってからのミスマッチが起きにくい。定着しやすい応募経路だと感じています。清掃という仕事の全体像はシニアの清掃員 完全ガイドで解説していますので、これから検討する方はあわせてご覧ください。

朝は早いけれど|午後の時間が自由になった働き方

VOICE

最初は、久々の仕事だったことと、朝が早い職場なので、生活のリズムを作るのが大変でした。でも今は、午後から家のことをしたり、友人とお茶をしたり、時間を有効に使えているので楽です。

ただ、65歳を超えたあたりから徐々に疲れやすくなってきているので、今後はもう少しペースを落として働きたいと思っています。

採用担当より

オフィスビルの清掃は早朝勤務が多く、始めたばかりの生活リズム作りは、実は多くの方がつまずくところです。ここを乗り越えて習慣にできた方は、その後が安定します。一方で、午前中に仕事を終えて午後が自由になるという時間の使い方は、家庭や自分の予定と両立しやすく、シニアの働き方として相性がいいと感じます。

「ペースを落として働きたい」という声も、採用する側は大切に受け止めています。年齢とともに働き方を調整したいという希望は自然なことで、それを言い出せる関係や職場を選べているかどうかが、長く続けられるかの分かれ目になります。

無理をしないペースの作り方

VOICE

自分でリズムを作るのが大事だと思います。習慣になれば、それが当たり前になりますから。

疲れたときや休日は、ごろごろするのではなく、逆に夫とお出かけするようにしています。神社巡りなど、自然のある所へ行って、心がリフレッシュすることを心がけています。夫は年上で70目前ですが、まだ嘱託で週4日働いているので、お互いに無理がないようにしているんです。

一緒の時間を作ることも大事ですが、あえてお互い一人の時間を作ることも意識しています。そこが、今の生活にちょうど合っているのかもしれません。

🔍 タップで拡大して読めます
無理をしないペースの3つの工夫 1 リズムを 習慣にする 当たり前になれば つらくない 2 休日は動いて リフレッシュ 神社巡りなど 自然のある所へ 3 夫婦で距離感 を大切に 一緒の時間と 一人の時間を両立 「今の生活にちょうど合っている」とマサコさん

マサコさんが続けるために実践している3つの工夫。休日にあえて体を動かし、夫婦それぞれの時間も大切にしている。

採用担当より

長く働き続けている方には、ある共通点があります。それは、休日をただ体を休めるだけに使わず、生活全体のリズムを自分で整えていることです。マサコさんの「習慣になれば当たり前になる」という言葉は、シニアが仕事を続けるうえで本質を突いていると思います。

採用する側にとって、長く安定して働いてくれる方は何より貴重です。そしてその安定は、根性ではなく、こうした暮らし方の工夫から生まれています。ご夫婦で無理のないペースを保っている点も、働き続けられる大きな土台になっています。

よかったこと|きれいに働く人を見て「私もちゃんとしないと」

VOICE

働きだしてから、若返ったと思います。清掃の仕事は、制服もやることも地味なんですが、私はオフィスビルに入っているので、きれいなOLさんや、同年代かなと思うような人がバリバリ働いているのを見かけるんです。それで、私もちゃんとしないと、と思うようになりました。

環境が人を変えるって本で読んだことがありますが、その通りですね。

採用担当より

「働く場所の空気が自分を変えた」。これは面接ではなかなか語られませんが、実際に働き続けている方からよく聞く実感です。オフィスビルの清掃は、そこで働く人たちの身だしなみや所作に触れる機会が多く、自然と自分も背筋が伸びるという方が少なくありません。

収入や勤務条件はもちろん大切ですが、こうした「働く環境が自分にどう作用するか」も、実は仕事選びの隠れた基準です。マサコさんのように前向きな作用を受け取れる方は、仕事そのものへの満足度も高くなります。

きつかったこと|60過ぎで初めてのぎっくり腰

VOICE

60歳を過ぎたぐらいのときに、腰を痛めたことがあります。ぎっくり腰でしょうか、それまで経験がなかったんですが、それ以降たまになるようになってしまって。だから、なるべく仕事以外では肉体的にきつくならないように心がけています。

採用担当より

清掃で一番相談が多いのが、腰への負担です。かがむ・持ち上げる・拭くといった動作の積み重ねは、年齢とともに腰にこたえます。マサコさんのぎっくり腰は、清掃を検討する方が知っておくべき現実のひとつです。

ここで見てほしいのは、マサコさんが「仕事以外で無理をしない」と、体の使い方を全体で管理していることです。採用する側としても、無理な作業を一人で抱え込まず、体の状態を正直に伝えてくれる方のほうが、結果的に長く安心して働いてもらえます。きつさとの付き合い方は、続けられるかどうかを大きく左右します。

人間関係|女性が多い職場、一人作業が自分に合う

VOICE

女性が多い職場なのですが、やっぱりみんな、仕事の愚痴や噂話が好きですね(笑)。

上司は男性で、おばちゃんたちに気おされながらも、うまく扱ってくれるので問題ないです。それに、仕事中は一人で作業することが多いので、そこも私に合っています。

採用担当より

清掃の職場は女性が多く、人間関係の合う・合わないが定着に直結します。採用する側としては、「一人で黙々と作業するのが好き」という方に清掃はよく合うと感じます。マサコさんが「一人作業が自分に合う」と言えるのは、仕事内容と自分の性格がかみ合っている証拠です。

どんな仕事でも、人間関係のちょっとした煩わしさはあります。そこと適度な距離を取りながら、自分に合う作業スタイルを見つけられるかどうか。これは面接では測りにくい部分ですが、長く働く方は自然とこの折り合いが上手です。

収入と年金|「年金がほとんどないから働く」

VOICE

時給は1,300円で、月の総支給は15万円から16万円くらいです。そこから保険などが引かれるので、手取りは平均すると14万円台になります。

年金は、私はほとんどないので、その分働かないといけないという気持ちです。夫は70歳から受け取るように繰り下げているのですが、今後の物価なども心配で。なにより、子どもたちに迷惑をかけたくないというのが一番です。

これから始める方に伝えたいのは、夫婦で無理をしないペースで、これからも働いていこうと思っている、ということです。

採用担当より

週5日・1日6時間で手取り14万円台という水準は、生活を支える柱としてしっかり機能する働き方です。「年金がほとんどないから働く」という切実な事情がありながら、マサコさんは無理をせず、続けられるペースを選んでいます。ここが大切なところです。

採用する側は、短期間で高く稼いですぐ辞めてしまう方より、無理のないペースで長く働いてくれる方を必要としています。マサコさんの「夫婦で無理をしないペースで」という考え方は、本人の暮らしにとっても、雇う側にとっても、ちょうどよい着地点だと思います。年金と仕事のバランスを含めた定年後の働き方は、定年後の仕事の選び方でも整理しています。

取材のあとで|ご主人にも少しお話を伺いました

取材の終わりに、マサコさんのご主人が顔を出してくださり、少しだけお話を伺うことができました。

取材の最後に少しお話を伺ったマサコさん夫婦の後ろ姿
取材の最後に少しお話を伺えたご主人と。退職後は地域で麻雀を楽しむのが目標だそう(※写真はイメージです)

ご主人は70歳を目前に、今も建設会社で事務系の仕事を嘱託として続けています。本当はそろそろ退職する予定だったものの、意外と後任が見つからず、そのまま働き続けることになったそうです。もうすぐ迎える70歳を機に、繁忙期が終わったら退職する予定とのことでした。

退職後は、好きな麻雀を地域のコミュニティで楽しむのが、今からの楽しみだと、うれしそうに話してくださいました。

採用担当より

ご主人の「後任が見つからず、そのまま続けた」というお話は、実は多くの企業で起きている現実です。長くその仕事を担ってきた方の経験は、思っている以上に替えがききません。繰り下げ受給をしながら70歳まで働き、その後は趣味の時間を楽しむ。ご夫婦それぞれが、無理のない形で仕事と暮らしの折り合いをつけている姿が印象的でした。

まとめ|「無理をしない」から、7年続いている

マサコさんの7年から見えてきたこと

  • 主婦から未経験で始めるなら、間口の広い清掃は現実的な選択肢になる
  • 知り合いの紹介での入職は、ミスマッチが起きにくく定着しやすい
  • 朝が早い勤務は最初の壁だが、習慣にできれば午後の時間が自由になる
  • 腰への負担は現実。仕事以外も含めて体を無理させない工夫が続けるコツ
  • 「無理をしないペース」を選べる人が、結果として長く働いている

マサコさんは最後にこう話してくれました。「夫婦で無理をしないペースで、これからも働いていこうと思っています」。年金だけに頼らず、自分の暮らしに合った働き方を続けるその姿は、定年後の仕事を考えるうえで多くのヒントを含んでいます。清掃という仕事のきつさや給与、定年の実際はシニアの清掃員 完全ガイドでくわしくまとめています。

よくある質問

60代・未経験でも清掃の仕事に就けますか?

就いている方は多くいます。清掃は60代以上が活躍しており、未経験の間口が広い職種です。特別な資格や経歴よりも、こつこつ働ける安定感が重視されます。今回のマサコさんも、主婦から59歳ごろに未経験でスタートしました。

清掃のパートは体力的にきついですか?

かがむ・拭く・持ち上げるといった動作が多く、とくに腰への負担があります。マサコさんも60代でぎっくり腰を経験しました。ただし、勤務時間や作業内容を選べる職場もあり、仕事以外でも体を無理させない工夫をすれば、長く続けている方が多くいます。

清掃の朝が早い勤務は続けられますか?

始めた当初は生活リズムを作るのが大変だという声が多いです。一方で、習慣になれば負担が減り、午前中に仕事を終えて午後の時間を自由に使えるという利点があります。マサコさんも今は、午後に家のことや友人との時間を持てて楽だと話しています。

清掃のパートの収入はどのくらいですか?

地域や勤務時間によって幅がありますが、今回のマサコさんは大阪府で時給1,300円、週5日・1日6時間の勤務で、月の総支給が15万円から16万円ほど、手取りは平均14万円台とのことでした。生活を支える柱として働ける水準です。

実体験ラボでは、50代以上の方の仕事体験談を募集しています。お話を聞かせてくださる方はお問い合わせフォームからご連絡ください。掲載の範囲やお名前の扱いは体験談の掲載に関する規約をご覧いただけます。

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著者:ぐっさん|シニア採用責任者

EDITOR IN CHIEF

アパレル副店長を経て通販支援会社へ転職。シニア採用に振り切った戦略で、上場企業の採用戦略に貢献(2024年)。5年間で延べ500名以上のシニアの採用に携わり、延べ3,000名以上と面談してきました。現在は360名規模の組織で労務マネージャー兼採用担当。

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