「健康のために働き続けたい」——定年後のシニアがよく使う言葉です。インターネットや健康雑誌でも「働くことが認知症予防になる」「定年後も仕事を続けると長生きする」という記事を目にします。
では採用担当として、この動機を持って面接に来るシニアはどれくらいいるのか。そして「健康のため」という動機で働く人は、本当に続くのか。年間1,000名以上のシニア求職者と向き合ってきた採用担当の正直な答えをお伝えします。
「健康のために働きたい」——採用担当が正直に言います
まず結論から言います。「健康のために働きたい」という動機を面接で語るシニアは、実はほとんどいません。
「健康のために働く」は、言葉としてはとても聞こえがよい。でも採用担当として面接の現場で聞いてきた動機は、ほぼ例外なく「収入が必要」「生活を支えたい」「社会とつながりたい」のどれかです。
これは批判ではありません。むしろ「稼ぎたい」「必要だから働く」という動機のほうが、採用担当から見ると誠実で信頼できるということです。「健康のため」という言葉は聞こえはいいですが、採用担当の目には「本当の理由を言っていないのかな」と映ることがあります。
「健康のため」が動機のシニアは続くのか
では仮に「健康のために働きたい」という動機を持っているシニアは、入社後に続くのでしょうか。採用担当の観察から言えば、動機よりも「現場との相性」と「体調管理の安定性」が定着率を決めます。
採用担当が定着率を予測するとき、「動機の種類」より「体調の安定性」を重視します。
持病・通院がある場合——採用担当の判断基準
「持病があるのですが、採用されますか?」という不安を持っている方は多いはずです。採用担当として正直にお伝えします。
採用担当が「OK」と判断する持病・通院のケース
- 定期検診・健康診断など、スケジュールが固定されている通院
- 「毎月第2火曜日は通院で午前休みが必要」のように事前に把握できる
- 通院日のシフト調整を事前に相談できる
- 持病があっても日常業務への支障がない状態が安定している
突発的な体調不良が繰り返される
採用担当として継続雇用が難しいと感じるのは、「日によって体調が左右される」「突発的な症状で急に休む」というパターンです。一度休み癖がついてしまうと、本当によく休むようになる。シフトに穴が開き続けると職場全体に影響します。そういう方には、シフトの縛りが少ない「スポットバイト・隙間バイト」のほうが合っている場合があります。
「持病があること」が採用のNGラインではありません。「体調が安定しているかどうか」が判断基準です。持病があっても安定して勤怠を守れている方は、採用担当から見て全く問題ありません。面接では「持病はありますが、通院は月1回・固定日程で業務には支障ありません」のように、具体的に安定性を伝えることが大切です。
「まだ体力に自信がある」——採用担当が見る黄色信号
「自分はまだ若いつもりでいる」「体力には自信がある」と言って応募してくるシニアは珍しくありません。ただ採用担当として、この言葉を聞くときに一つ確認したいことがあります。
前職を辞めた理由との「整合性」を見ている
採用担当として面接で確認するポイントの一つが、前職を辞めた理由と現在の体力・健康状態の整合性です。
たとえば「体力的にきつくなったので前職を辞めました」と言いながら「体力には自信があるので週5フルタイムで働けます」と言う方がいます。このズレが「黄色信号」です。採用担当は「本当のことを言っていないのかな」「入社後に同じ理由で休むようになるのでは」と感じます。
体力・健康について面接で伝えるベストな方法
「前職は立ち仕事が多く体に負担がかかりましたが、今は休養が取れて回復しています。週3〜4日・1日6時間程度であれば問題なく働けます」——このように「現在の状態」と「無理のない働き方の条件」を具体的に伝えるのが採用担当に最も信頼されます。過大評価も過小評価もせず、正確に伝えることが大切です。
「辞めてから気づく」——働くことの本当の健康効果
「健康のために働く」という言葉の真実は、実は働いているときではなく、仕事を辞めたあとに現れます。
厚生労働省の調査でも、就労継続が高齢者の身体機能・認知機能の維持に寄与するというデータが示されています。「働くことが健康によい」というのは、科学的にも裏付けがある話です。
ただ採用担当として言いたいのは、「健康のために働く」を動機として面接で語るより、「働いた結果、健康が維持できる」という順序で考えてほしいということです。動機は「収入が必要」「社会とつながりたい」「やることがあると充実する」で十分です。健康効果はその結果としてついてきます。
もう一つ伝えたいことがあります。「仕事を辞めたら休める」「楽になれる」と思って退職したシニアが、その後に急速に気力・体力が落ちるケースを採用担当として何度も見聞きしてきました。規則正しい生活リズム、人との接触、役割を持つこと——これらは仕事によってもたらされていたのだと、辞めてから初めて気づく方が多い。「健康のために働く」という言葉は後付けかもしれないけれど、結果として正しい選択だと思っています。
働くことの健康効果は「辞めてから気づく」。続けることが一番の健康法かもしれません。
よくある質問
「健康のために働きたい」と面接で言ってもいいですか?
言ってもマイナスにはなりませんが、それだけで終わると採用担当には「本当の動機は何だろう」と映ることがあります。「健康維持にもなりますし、収入面でも月◯万円程度を希望しています」のように、具体的な条件と合わせて伝えると誠実に聞こえます。「健康のため」を全面に出すより、実際に働ける条件と意欲を具体的に伝えるほうが採用担当の印象に残ります。
高血圧・糖尿病などの持病があります。採用されますか?
持病の種類より「体調が安定しているか」「通院スケジュールが把握できているか」が採用判断の基準です。定期的な通院があっても、スケジュールが固定されていれば問題になりません。面接では「持病はありますが、投薬でコントロールできており、定期通院は月1回・固定日です」のように具体的に伝えることをおすすめします。業務への支障がないことを自分の言葉で説明できれば、採用担当の不安はかなり軽減されます。
70代でも採用されますか?体力面で不安があります。
70代を積極的に採用している職場は実際にあります。体力面については、「週3日・1日4〜5時間」のような無理のない条件を最初から提示することをおすすめします。採用担当として言えるのは、「70代だから無理」ではなく「今の自分の体力に合った条件で正直に伝えられるか」が重要だということです。過大申告をして入社後に続かなくなるより、最初から正確な条件を伝えた方が、長く働けます。
体力に自信がなくなってきました。どんな仕事が向いていますか?
体への負荷が少ない仕事としては、コールセンター(座り仕事・屋内)・マンション管理員(基本的に常駐・体を大きく使わない)・軽作業(ピッキング・梱包・立ち仕事だが重労働ではない)などがあります。警備員は立ち時間が長いため体力が必要です。自分の体力を正直に把握して、条件に合う職種を選ぶことが長続きの第一歩です。
まとめ:「健康のため」より「今の自分に正直に」
この記事のまとめ
- 「健康のために働きたい」を動機として面接で語るシニアは、採用担当の経験上ほぼいない
- 掘り下げると「稼ぎたい」に行きつく——それは正直で誠実な動機
- 持病があっても「体調が安定・通院スケジュールが固定」なら採用の障害にならない
- 「体力に自信がある」の自己評価と現実のズレが、入社後の離脱につながりやすい
- 働くことの健康効果は「辞めてから気づく」——続けることの価値は、働いている間には見えにくい
「健康のために働く」は結果として正しい。でも採用担当への伝え方としては、「今の自分の体力と条件を正直に話せる人」のほうがずっと印象がよく、入社後も長続きします。
自分の体力を過大評価せず、過小評価もせず、正確に把握して正直に伝える——それが60代・70代の就活で最も大切なことの一つです。
採用担当として最後に一つ。体力や健康に不安を持ちながら就活をしているシニアほど、面接で正直に話してくれる傾向があります。「こんな持病があるんですが大丈夫ですか」「週3日以上は難しいのですが」という正直な言葉を聞いたとき、採用担当は「この人は信頼できる」と感じます。不安を隠して「全部大丈夫です」と言う人より、現実を正確に伝えてくれる人のほうが、採用後のミスマッチが少なく、結果として長く続きます。正直に話すことを、怖がらないでください。
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参考データ
- 厚生労働省「高年齢者の就業実態と健康状態に関する調査」— 厚生労働省

