「研修についていけない。自分には無理なのかもしれない」——そう感じて、この記事にたどり着いた方に、最初にお伝えしたいことがあります。
採用担当として年間1,000名以上のシニアと向き合ってきた経験から言うと、コールセンターの研修でつまずく60代には、60代だからではなく、明確な「原因」があるのです。その原因を知れば、対策は見えてきます。この記事では、研修で詰まる本当の理由と、実際に乗り越えた人たちの共通点をお伝えします。
コールセンターの研修についていけない——60代に多いパターンとその原因
採用担当として、コールセンターの研修期間中に「ついていけない」と感じて辞めていく60代のスタッフを何人も見てきました。そういう方に共通する詰まりポイントは、実はかなりはっきりしています。
一番多いのはパソコン操作のギャップ
面接のときに必ず聞きます。「簡単なPC操作はできますか?マウス操作や簡単なタイピングは大丈夫ですか?」と。そのうえで採用するのですが、実際に研修に入ると、「全くできない」というケースが出てきます。
多くのコールセンターでは、コールセンター専用の管理システム(CTI)を使っています。シンプルなマウス操作やプルダウンで対応できる場合も多いのですが、会社によっては2画面同時表示(デュアルディスプレイ)を使いながら通話しつつタイピングする、という環境もあります。
特にインバウンド(お客様からかかってくる受信業務)は、パソコン操作が前提のうえに、業務として覚えることが多い。専門知識の習得に集中したいのに、「仕事道具の使い方そのもの」でつまずいてしまうと、両方の壁が同時にのしかかってきます。
インバウンド研修の「覚える量」が想定外に多い
もう一つ、見落とされがちな原因があります。それは、インバウンドとアウトバウンドで、研修で求められる「覚える量」がまったく違うという事実です。
ここがポイント
「コールセンターの研修」とひとくくりにしがちですが、受信(インバウンド)と発信(アウトバウンド)では、研修の難しさが根本的に違います。研修でつまずく60代の多くは、インバウンドを選んだことが原因の一つになっています。
インバウンドは、10人のお客様がかけてきたら、10通りの問い合わせが来ます。それぞれの問い合わせに対して、正しい答えを自信を持って返さなければなりません。そのためには、覚えることの量が圧倒的に多く、知識量が問われます。そして、覚えることにおいては、若い世代が圧倒的に有利です——これは現場での実感です。
一方のアウトバウンドは、1つのキャンペーンや商品・サービスを案内する仕事です。こちらからお電話するので、会話の「型」があります。断られたときの切り返し方も、ヒアリングの進め方も、ある程度決まってきます。
同じ「コールセンター」でも受信と発信では研修の難しさが根本的に違う
「研修についていけない」と感じている方は、まずこの違いを確認してください。インバウンドからアウトバウンドに変えるだけで、研修の壁が大きく下がることがあります。
採用担当が見てきた「研修で詰まる人」と「乗り越える人」の差
研修の難しさは誰でも感じます。問題は、その難しさにどう向き合うかです。ここに、詰まってしまう人と乗り越えていく人の差が生まれます。
「わかったふり」が研修崩壊の引き金になる
60代の方に特有のパターンとして、研修でわからないことがあっても「わかりました」と言ってその場を乗り越えようとするケースがあります。長いキャリアの中で「わからない」と言いにくい習慣が身についている方や、「自分には経験があるから」という自負が邪魔をしてしまう場合です。
その場でわかったふり→あとで発覚するパターン
「自分は経験者だから」という意識からちゃんと話を聞かず、わかったふりをして進める。このパターンが一番危険です。わからないことをわからないまま進められるほど、仕事はあまくありません。あとで必ずボロが出ます。
「詰まる・乗り越える」の差は才能ではなく、この3つの行動習慣だけ
乗り越える人の共通点は「謙虚に繰り返す」だけ
研修で詰まりながらも乗り越えていった人たちに、共通する行動があります。難しいことでもなんでもありません。
研修を乗り越えた人がやっていたこと
- わからないことはその場で謙虚に何度も聞く
- メモを取る(メモが取れない人は詰まりやすい)
- 家に帰ってから復習する
- 翌日も同じことを繰り返し、体に覚えさせる
当たり前に聞こえますか?そうです、当たり前のことです。でも、これができない大人が意外に多い。
60代がコールセンターの研修を乗り越えたリアルなエピソード
「できるはずがない」と思われていた人が、踏ん張って続けることで仕事を手にした——そういう場面を、採用担当として何度も見てきました。一つ、印象に残っているケースをお伝えします。
55歳で定年を迎えた元自衛官の方が、派遣経由でコールセンターに来たことがあります。自衛官は階級が低いと50代で定年を迎えるケースが多く、その後の仕事に困る方も少なくありません。その方は、営業経験もなく、お世辞にも会話が上手いとは言えませんでした。
研修の最初から、ぶっきらぼうな話し方と、パソコン操作の遅さが目立っていました。周囲から見ても「続くのかな」と思われていたはずです。でも、その方は毎日必ずメモを取り、わからないことは担当者にすぐ聞き、家に帰ってからも自分のメモを読み返していました。
覚えるスピードは速くありませんでした。でも、2ヶ月後には目標の数字を達成するところまで来ていました。その後、収入面の事情でより条件の良い職場に移っていきましたが、コールセンターでの経験が次のキャリアの土台になりました。
ここがポイント
研修期間中に「もうついていけないかも」と感じた方が乗り越えられたケースに共通しているのは、「諦めなかった」ということ以上に、「謙虚に聞き続けて、家でも復習した」という具体的な行動でした。特別な才能は必要ありません。いくつになっても、本気で取り組めば体は覚えていきます。
60代が研修期間中に「心が折れそう」になったときの対処法
研修中に「もう無理かもしれない」と感じる瞬間は、誰にでも来ます。60代であれば、なおさらそのプレッシャーは大きいはずです。ここでは、その瞬間をどう乗り越えるかをお伝えします。
まず「詰まっている原因」を言語化する
「ついていけない」という感覚は、実は複数の原因が重なっている場合がほとんどです。パソコン操作なのか、商品知識なのか、トークスクリプトなのか——何が「わからない」のかを自分で言語化できると、対処が具体的になります。
漠然と「全部ついていけない」と感じているうちは、何から手をつければいいかもわかりません。まず、今日の研修で「一番わからなかったこと」を1つだけ書き出してみてください。それを翌日の研修担当者への質問にする。これだけで、少しずつ壁が低くなっていきます。
研修担当者は「敵」ではない
採用担当として現場を見てきて感じるのは、研修担当者の多くは「この人に続けてほしい」と思っているということです。わからないと言われれば、丁寧に教える準備があります。困っていることを打ち明けてもらえれば、対応策を一緒に考えることができます。
研修担当者を「評価する人」「怖い人」と思って距離を置くと、困っていることが伝わらないまま時間が過ぎていきます。研修担当者は採用した人に「辞めてほしい」とは思っていません。むしろ「定着してほしい」という立場で関わっています。
「今の会社の研修が合わない」と感じたら選択肢を広げる
研修についていけない原因が「自分の力不足」ではなく、「この会社の研修スタイルが自分に合っていない」というケースもあります。たとえば、座学中心の研修が苦手な方が実践型の職場に移ったら、すんなり覚えられたというケースは実際にあります。
研修のスタイルは会社によって大きく違います。今の職場の研修に限界を感じているなら、「この仕事が自分に合わない」と決めつける前に、「この会社の研修スタイルが合わないだけかもしれない」という視点を持ってみてください。
60代が研修をスムーズに進めるための入社前準備
「入社前にこれをやっておけばよかった」——研修を経験したシニアスタッフからよく出る言葉です。採用担当として何度も耳にしてきたので、整理してお伝えします。
PC操作は少しでも触れておく
圧倒的に多いのは、パソコン操作の事前練習です。「面接後に入社前にやっておいてください」と伝えても、実行する方はほとんどいません。そして研修で「やっぱり触っておけばよかった」となるのが繰り返されます。
専用システムは入社後でしか触れませんが、マウス操作・基本的なタイピング・ファイルを開く・文字を入力するといった基本動作は、今すぐ練習できます。スマホだけでなく、パソコンに触れる機会を意識的に作ってください。図書館や地域のパソコン教室など、無料・低コストで練習できる場所もあります。
業界・会社・商品について調べておく
入社前にやっておくと効果的な準備
- マウス操作・基本的なタイピングの練習(毎日少しずつでOK)
- 応募先の会社のホームページを読んでおく
- 取り扱う商品・サービスについて調べておく(通販なら定期便とは何か、など)
- コールセンターの仕事内容を解説した記事を読んでおく
- 研修で「わからなかったらすぐ聞く」と心に決めておく
たとえば通販のアウトバウンド業務なら、定期便とはどういうサービスか、なぜ定期便というビジネスモデルがあるのか、どんな商品が人気なのか——こういったことを事前に調べておくだけで、研修のスタートダッシュが変わります。調べて勉強してきた人は、研修での吸収が違います。
「後悔するのは、アドバイスを聞かない人、実行しない人、謙虚じゃない人」というのが、採用担当として現場で見てきた結論です。
コールセンター研修についていけない60代からよくある質問
60代がコールセンターの研修についていけない一番の原因は何ですか?
最も多いのはパソコン操作のギャップです。コールセンターの仕事道具であるパソコンの基本操作が不十分なまま入社すると、業務内容と操作の「二重の壁」が同時にのしかかってきます。また、インバウンド(受信業務)を選んだことも原因のひとつです。インバウンドは覚える量が圧倒的に多く、若い世代が有利な業務です。
インバウンドとアウトバウンドでは研修の難しさはどう違いますか?
インバウンド(受信)は10通りの問い合わせに10通りの正しい答えが必要で、覚える量が圧倒的に多く、60代には難易度が高いです。アウトバウンド(発信)は1つの商品・サービスを案内する業務で、会話の「型」があります。研修の壁が低く、60代・未経験者に向いています。
研修中にわからないことがあったとき、どう対処すればいいですか?
その場で謙虚に何度でも聞くことが最善です。「わかったふり」をしてその場を乗り越えようとすると、後から必ず問題が出てきます。採用担当の経験では、「わかりません、もう一度教えてください」と言える人が最も安心できます。
研修を乗り越えた60代に共通する行動習慣は何ですか?
わからないことはその場で謙虚に何度も聞く、必ずメモを取る、帰宅後に復習する、翌日も同じことを繰り返し体に覚えさせる——この4つです。特別な才能は必要ありません。覚えるスピードが遅い分は、反復の量で補えます。
入社前にやっておくと研修がスムーズになる準備は何ですか?
パソコンの基本操作(マウス・タイピング・ファイルを開く)を少しでも練習しておくことが最優先です。図書館や地域のパソコン教室を活用するのもおすすめです。また、応募先のホームページを読む、取り扱う商品・サービスを調べておくことも効果的です。
研修を途中で辞めたいと思ったらどうすればいいですか?
まず、辞めたい理由を「パソコン操作」「覚える量」「研修スタイル」のどれかに特定してください。原因によって対処法が違います。パソコン操作なら練習で改善できます。覚える量が多すぎるならアウトバウンドへの変更を相談できます。研修スタイルが合わないなら、別の会社のコールセンターが合う可能性があります。衝動的に辞める前に、研修担当者か採用担当者に「ここが難しい」と正直に伝えてみてください。
この記事のポイント
- コールセンターの研修についていけない60代の原因は「60代だから」ではなく、「インバウンドを選んだこと」と「わかったふりをすること」がほとんど
- インバウンドからアウトバウンドに変えるだけで、研修の壁が大きく下がるケースが多い
- 「わからないことをわからないと言える」人が、採用担当から見ると最も安心できる
- 乗り越えた人の共通点は、謙虚に聞き・メモを取り・家で復習するという当たり前の積み重ねだけ
- 研修担当者は「敵」ではなく「定着させたい」立場。困っていることを正直に伝えることが最善策
- 入社前にPC操作を少し練習し、業界・商品を調べておくだけで研修のスタートが変わる
- 辞めたいと思ったら衝動的に動かず、まず原因を特定して担当者に相談する
最後に、研修でついていけないと感じているあなたへ、採用担当として伝えたいことがあります。
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