「清掃の仕事、実際どれくらい稼げるの?」——この記事にたどり着いたということは、おそらくそれが一番知りたいことのはずです。給与の話は、他の清掃記事では曖昧にされがちです。「時給1,000〜1,500円程度」という幅の大きすぎる数字が並んでいても、自分がいくら稼げるかはわかりません。
採用担当として年間140名のシニア採用に携わり、説明会・セミナーで清掃会社の採用担当者とも直接話してきた立場から、そして義母がオフィスビルの清掃員として実際に働いている家庭の視点から、「施設別の時給の実態」「早朝・夜間割増でいくら変わるか」「週何日でいくら稼げるか」「扶養・年金との設計をどう考えるか」を正直にお伝えします。
清掃員の時給の相場——まず数字から正直に
結論から言います。清掃員のパート・アルバイト時給は、全国平均で1,100〜1,200円程度が実態です。求人ボックスの2026年1月集計では清掃スタッフのパート平均時給は1,136円、Indeedの集計(2025年11月)では清掃スタッフ全体で1,356円となっています。この差は、正社員・派遣込みのデータと、パート・アルバイト限定のデータの違いから生まれています。シニアがパートとして応募する場合は、1,100〜1,250円の範囲を現実的な出発点として考えてください。
ただし、この数字は「施設の種類」と「時間帯」によって大きく変わります。オフィスビルの日中清掃なら最低賃金近辺の求人も珍しくありませんが、早朝シフトや病院・特殊施設になると時給が上がります。まずは施設別の相場感をつかんでおくことが、求人選びの第一歩です。
施設によって時給に150〜250円の差がある。単純に「高い施設」を選べばいいわけではなく、体力負担とのバランスが重要
早朝・夜間の割増で「実質時給」はどう変わるか
清掃の仕事で収入を上げる最も手軽な方法は、時間帯を変えることです。労働基準法では夜22時〜翌5時の深夜帯には25%以上の割増賃金が義務付けられており、早朝(5〜8時台)はこの法定の対象外ですが、求人上は独自に割増を設定している求人が多くあります。
義母が勤めるオフィスビルは、早朝6時スタートで時給が通常シフトより約150円高く設定されています。週4日・1日4時間勤務で計算すると、月収は以下のようになります。
同じ週4日・4時間勤務でも、時間帯だけで月収に1.5万円以上の差が生まれる。夜間は収入は高いが、シニアの体力・生活リズムへの影響も考慮が必要
夜間(深夜帯)は時給が最も高くなりますが、シニアには生活リズムへの影響があります。就寝時間が変わると体調管理が難しくなり、結果的に欠勤が増えたり早期退職につながるケースを採用の現場で何度も見てきました。収入と体への負担のバランスを考えると、シニアには早朝シフト(6〜10時台)が最も現実的な選択肢だと私は考えています。
◯ 早朝シフトを選ぶ3つのメリット
① 通常より時給が100〜200円高く設定されている求人が多い。② 午前中に仕事が終わるため、昼以降は自由に使える。③ 体への負担が夜間より少なく、生活リズムを崩しにくい。義母はこの早朝シフトで週4日・約4時間の勤務を5年以上継続しています。「慣れれば6時起きは苦でない」というのが本人の弁です。
月収・年収のリアル——「週何日・何時間」で手取りいくらか
「清掃員の時給は低い」という声があります。一方で「月25万円稼いでいる」という話も出てきます。この差はどこから来るのか。答えは「週何日・何時間働くか」の差です。シニアのパート清掃員としての現実的な月収レンジを整理します。
清掃で「月25万円」は週5日フルタイム相当。シニアには週3〜4日・4〜5時間の「月6〜10万円」が体力・扶養の両面で現実的な設計
「年収の壁」と清掃パートの設計
シニアのパート就労で必ず確認が必要なのが「年収の壁」です。配偶者の扶養に入っている方、あるいは年金を受給しながら働く方は、収入の上限をどこに設定するかで手取りが大きく変わります。2026年は税・社会保険の両面で改正が入っており、以前の「103万円」「130万円」という認識だけでは正確ではありません。
◯ シニア清掃員が2026年時点で意識すべき収入の壁
- 所得税の壁(160万円→178万円)——2025年1月の税制改正で基準が引き上げられ、2026年11月時点では年収160万円以内が所得税ゼロの目安。2026年12月の年末調整以降は178万円に拡大。週3〜4日・4〜5時間の清掃パートなら年収は60〜90万円前後となり、所得税を気にする必要はほぼない
- 社会保険の扶養(60歳未満:130万円 / 60歳以上:180万円)——超えると配偶者の社会保険の扶養から外れる。60歳以上のシニアは130万円ではなく180万円が基準(2026年4月の判定方法改正済み)。清掃週4日・早朝シフトの月収8〜10万円・年収96〜120万円程度なら、60歳以上の方は問題なく扶養内に収まる
- 年金受給者の場合(在職老齢年金)——2026年4月から支給停止の基準が月65万円(年金+給与の合計)に大幅引き上げ。清掃パートの収入水準では年金が減額されることはまずない。働き控えの必要はない
年収の壁の詳細は制度が複雑で、個人の状況(年齢・年金受給額・配偶者の加入保険)によって異なります。シニア向けに2026年の最新制度をまとめた詳細解説は 【2026年最新】シニアの年収の壁を完全ガイド——178万・180万・在職老齢年金65万まで をご覧ください。
清掃の仕事は「勤務日数・時間が調整しやすい」という特徴があります。複数のシフトパターンを用意している求人が多く、「今月は少し稼ぎたい」「来月は控えたい」という調整がしやすい。年収の壁を意識した収入設計と、この柔軟性は相性が非常に良い。これが清掃が「シニアの扶養内就労に向いている仕事」と言われる理由のひとつです。
清掃の給与はなぜ上がりにくいのか——採用担当の本音
正直に言います。清掃員のパート時給は、他の職種と比べて上昇余地が限られています。その理由を採用担当の視点から説明します。
清掃業務は「委託費」という形で発注側(ビル管理会社・施設オーナー)が予算を設定します。この委託費の枠が決まっている以上、清掃会社が自由に時給を引き上げることは難しい構造になっています。さらにシニアの多くは嘱託・有期雇用での採用が現実です。「正社員は定年規定があるので嘱託や有期雇用になる。職責的に資格が役立つシーンも少ない」のが清掃業界の実態です。
✕ こんな期待は持たない方がいい
- 「長く続ければ時給が上がる」——清掃パートの時給は年功賃上げが少ない。むしろ最低賃金の引き上げに合わせて少しずつ上がる程度
- 「資格を取れば給与が上がる」——ビルクリーニング技能士などの国家資格は、正社員の評価には有効だが、シニアの嘱託・パートには評価に反映されにくい
- 「経験を積めばリーダー職で収入アップ」——清掃リーダー・作業監督への昇格はあるが、対象ポストが少なく、シニアが定年後にそこを狙うのは現実的ではない
時給を上げるための3つの現実的な方法
給与が上がりにくいという構造はあっても、工夫次第で収入を増やすことは可能です。採用担当として見てきた中で、実際に機能している方法を3つ紹介します。
① 施設・配属先を変える
同じ清掃でも、施設の種類で時給が違います。オフィスビルの日中清掃から病院清掃・特殊清掃に移ると、時給が100〜300円上がるケースがあります。ただし、業務内容の難易度と体への負担も上がります。現在の体力・健康状態と相談しながら判断してください。
② 時間帯を変える(早朝・夜間シフト)
前述の通り、同じ施設・同じ仕事内容でも、早朝シフトを選ぶだけで月収が1〜2万円変わります。体力的に夜間は難しくても、早朝6〜7時台ならシニアでも継続している方が多い。これが最もリスクの低い収入アップ方法です。
③ フランチャイズで独立する(収入を根本から変えたい場合)
清掃業で本当に稼ぎたいなら、パートの時給を上げることには限界があります。清掃のフランチャイズという選択肢があり、個人経営では年収1,000万円を超えるケース、繁忙期の単月100万円という水準も実在します。「個人で稼ぐ仕事がしたい」「体力より技術・営業力で勝負したい」という方には、パートとは別次元の話になります。
「清掃で稼ぐ」は段階によって意味が違う。シニアパートは月収を最大化するより、長く続けて総収入を積み上げる設計が現実的
給与以外で清掃を選ぶ理由——シニアの本当の価値
ここまで給与・時給の数字を正直に伝えてきました。清掃員のパート時給は決して高くない。その前提の上で、なぜシニアが清掃を選ぶのかを最後に整理します。
採用担当として見てきた中で、清掃を長く続けるシニアに共通しているのは「お金のためだけで選んでいない」という点です。もちろん収入が必要だから働いている。でもそれだけじゃない。
◯ 清掃の仕事がシニアに向いている理由(給与以外)
- ITが苦手でも問題ない——清掃業務にパソコン・スマートフォンの操作は基本的に不要。説明会でも「ITアレルギーがある方が清掃や警備に流れてくる」という声は複数の採用担当から出てくる
- 体を動かすことが健康維持になる——義母は清掃の仕事を始めてから体調が安定していると話しています。適度な歩行・軽作業は、シニアの体力維持として医療費の節約にもなる
- 「需要がなくならない」という安心感——AI・ロボットが進化しても、清掃の現場作業が完全に機械に置き換えられる時代はまだ先。働く場がなくなるという不安がない
- 人間関係がシンプル——基本は一人作業で、複雑な人間関係に消耗しない。「人と深く関わるのが苦手」という方が自分のペースで集中できる環境
- 社会とのつながりを維持できる——定年後に仕事がなくなると、一気に社会から切り離されたように感じる方が多い。週3〜4日働くことで、規則正しいリズムと社会との接点を保てる
義父が清掃の仕事を引退した後、みるみる老け込んだという話があります。義母はまだ現役で、表情も声も違う。仕事が体を動かす習慣と、社会とつながっている実感を支えているのを間近で見てきました。月収の多寡だけで仕事を測るのでは、シニアの働く意味を捉え切れない部分があると思っています。
清掃員の給与——よくある質問
清掃員のパート時給は最低賃金と変わらないのですか?
施設や時間帯によって違いますが、日中のオフィスビル清掃などは最低賃金プラス50〜100円程度という求人も珍しくありません。一方、早朝シフト・病院・商業施設は最低賃金より100〜300円高い設定が多い。「時給が低い」という印象は、日中・標準シフトの求人を見た場合に生まれやすいです。早朝・時間帯を選ぶことで実質的な時給は上がります。
週3日・4時間の清掃パートで年間いくら稼げますか?
時給1,150円の場合、週3日×4時間×52週で計算すると年収は約71.8万円です。2026年の所得税の壁(年収160万円)の範囲内に十分収まります。早朝割増があれば時給が1,250〜1,300円になるケースもあり、同じ日数・時間数でも年収が78〜81万円程度に上がります。いずれにしても所得税ゼロで、扶養内を維持しながら安定的に稼ぐことが可能です。
清掃の仕事で交通費は支給されますか?
多くの清掃会社では交通費の支給があります。ただし上限が設定されている場合が多く(月1万〜1.5万円程度)、遠方からの通勤には自己負担が発生することがあります。清掃の仕事は「通勤30分以内」で探すことを強くおすすめします。交通費の自己負担が増えると実質的な時給が下がるだけでなく、通勤の疲れで仕事が長続きしにくくなります。
日払い・週払いに対応している清掃の求人はありますか?
あります。特にビルメンテナンス系のパート求人では、日払い・週払い対応の会社が一定数あります。急に現金が必要な場合や、月末まで待てない事情がある場合には、求人票の「給与形態」の欄を確認してください。ただし日払い対応の求人は管理コストが高いため、時給が若干低めに設定されているケースもあります。トータルで比較することをおすすめします。
清掃のパートで社会保険に入ることはできますか?
週20時間以上・月収8.8万円以上の勤務が見込まれる場合、社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が義務付けられています(従業員51人以上の事業所が対象)。扶養から外れて社保に加入すると、老後の年金受給額が増えるメリットがあります。「今は扶養内で」という方は勤務時間を週20時間未満に抑えることで、社保加入を回避しながら働けます。週の時間数を求人先に確認しておくことを忘れずに。
清掃員の給与は地域によってどれくらい差がありますか?
地域差はあります。求人ボックスの集計では、最も時給が高い都道府県は東京都の1,243円、最も低いのは秋田県の999円で、約244円の差があります。最低賃金が高い都市圏(東京・神奈川・大阪など)では自動的に時給の底上げが起きていますが、地方では最低賃金近辺の求人が多くなります。都市近郊に住んでいる場合は、自宅から遠くても賃金の高いエリアへの通勤も選択肢になります。ただし通勤コストと時間を加味した上で、実質的な手取りを計算することが大切です。
未経験でも清掃の仕事を始められますか?給与は下がりますか?
清掃の仕事は「未経験歓迎・資格不問」の求人がほとんどです。入社後に研修や先輩スタッフのOJTで作業手順を覚える形が一般的で、未経験だからといって時給を下げられるケースは少ない。清掃業界では経験の有無より「真面目に継続できるか」「体力的に無理がないか」が採用の判断軸になる傾向があります。最初から複雑な施設(病院・特殊清掃)を選ばず、オフィスビルや小規模施設から始めると、無理なく経験を積みながら長続きできます。
まとめ
清掃員のパート時給は、全国平均で1,100〜1,200円程度が現実的な出発点です。施設の種類(病院・早朝シフトは高め)と時間帯(早朝で100〜200円増)によって変わり、工夫次第で月収を上げることができます。
ただし、清掃パートで大きく稼ごうとするには限界があります。重要なのは、年金・扶養との組み合わせ設計で「手元に残るお金」を最大化する考え方です。週3〜4日・4〜5時間・早朝シフトという組み合わせが、体力・収入・扶養のバランスが取れた現実的な選択肢です。2026年は年収の壁の基準が変わっており、60歳以上は社会保険の扶養基準が180万円になっている点も確認してください。
義母が5年以上清掃の仕事を続けている理由は、給与の高さではありません。自分のペースで体を動かし、社会とつながり、毎朝きれいになった場所を見る達成感——そういう積み重ねが長続きの理由です。清掃の給与は低くない、ただし「稼ぐ仕事」ではなく「続ける仕事」として設計してください。
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