「警備員の仕事は4種類ある」——この情報は、検索すれば誰でも書けます。 でも、シニアが応募する前に本当に知っておきたいのは、4つの分類そのものではなく、 自分が4つのうちどれに向いているか、そしてシニアが警備に流れていく構造です。
採用担当としてシニアの応募を年間140名見てきた立場から、説明会・面接の現場で起きていることをそのまま書きます。 読み終わるころには、求人票のどこを見れば失敗しないかが分かるはずです。
警備員はシニアが約半数——「実はメジャー職業」というデータ
ご存知でしょうか。日本の警備員は約58万人いますが、そのうち60歳以上が46.9%を占めています。半数近くがシニアという職業は、ほかにそう多くありません。
さらに踏み込むと、年齢別の構成で最も多いのは「70歳以上」(20.9%)。50代(19.9%)よりも、70代以上のほうが多いのです。これは警察庁が毎年公表している公式データ(令和6年「警備業の概況」)に基づく事実です。
説明会の現場でも、年配の方は珍しくありません。私が以前、別の業種説明会の控室で警備会社の担当者と話していたとき、こんな話を聞きました。「うちの会社の現役で、80代の方がいます。午前中だけの短時間勤務で続けている人です」と。これは特殊な事例ではなく、警備業界では珍しくない光景なのだそうです。
なぜ、これほどまでに警備員にシニアが多いのか。次の章で「シニアが警備に流れていく構造」を採用担当の視点から解説します。
出典:警察庁「令和6年における警備業の概況」(PDF)(2025年7月公表)
シニアが警備に流れていく3つの構造
警備にシニアが多い理由を「人手不足だから」の一言で片づける記事は多いですが、現場で見ていると、もっと具体的な構造があります。シニアの応募者には、大きく分けて3つの流入経路があると私は感じています。
構造1:パソコンが苦手な層が、自然と警備へ流れる
シニア採用の面接で「パソコンは使えますか?」と聞いたとき、「使えません」で会話が終わる方は珍しくありません。スマホの操作に不慣れな方も多くいます。レジが次々とセルフレジになり、銀行の手続きもスマホで完結する時代に、自分のスキルをアップデートする機会を持たなかった方々です。
これは責められる話ではありません。新しいことを覚える方法そのものを知らないだけ、ということもあります。ただ事実として、令和の時代にオフィスワークで活躍するには、最低限のITスキルが必要です。それが難しい場合、選択肢は身体を使う仕事に絞られていきます。警備や清掃が、シニアの転職先として自然に浮上するのはこのためです。
接客業や現場系の仕事を長年やってこられた方ほど、この流れに乗りやすい傾向があります。逆にいえば、警備業界は「ITスキルがなくても活躍できる」数少ない業界です。これは欠点ではなく、シニアの強みを活かせる構造といえます。
構造2:夜勤や現場仕事に慣れた層が、生活リズムを活かして警備へ
もうひとつの大きな流入経路が、夜勤や不規則な現場仕事に慣れた層です。具体的には次のようなパターンです。
- タクシードライバー出身者——長年の運転で座りっぱなしの限界を感じ、動く仕事に転職するケース。生活リズム自体は警備と相性がいい
- 工事現場の施工業者出身者——重機を扱うのは難しくなっても、交通誘導なら現場感覚を活かせる自然な流れ
- 飲食業出身者——立ち仕事に慣れており、人と接することにも抵抗がないため、施設警備との相性がいい
ぐっさん本人は警備業界の人間ではないので断言できる立場ではありませんが、これまで面接で出会ってきたシニアの転職事例から見ると、「相性がいい」という提案はできます。前職で身体を動かす仕事をしてきた方や、夜勤に体が慣れている方は、警備で続きやすい傾向があります。
構造3:選択肢が絞られた先に、警備という受け皿がある
3つ目のパターンは、最初から「警備をやりたい」と決めて来る方ではなく、消去法的に警備にたどり着く方々です。
「警備に明確に転職を決めて来る人」を私はあまり見たことがありません。多くの場合、こういう経路をたどります。
- 営業はもうやりたくない
- 数字や目標達成を追う仕事は苦手
- でもPC作業も得意ではない
- シニアという年齢的な前提もある
この4つが揃うと、応募できる業界はおのずと絞られていきます。そして、その絞り込みの先に警備が「受け皿」として存在しています。これは決してネガティブな話ではありません。警備業界はシニアを受け入れる準備ができているという意味でもあります。
自分が3つのうちどのパターンに当てはまるか、考えてみてください。それによって、次に解説する4業務のうち、どこを目指すべきかが見えてきます。
警備の4業務とシニア適性——採用担当が面接で見ているもの
警備員の仕事は、警備業法という法律で1号から4号まで4つの区分に分けられています。これは警備会社が事業を行うときの分類ですが、シニアが応募する際にも、自分がどの号の警備に就くのかを知っておく必要があります。
まず全体像を表で確認してください。業者シェアとは、その業務を実施している警備会社の割合です。
| 業務区分 | 主な仕事 | 業者シェア | シニア適性 |
|---|---|---|---|
| 1号(施設警備) | オフィスビル・商業施設・病院などの常駐警備 | 64.5% | ◎ |
| 2号(交通誘導) | 道路工事・イベント会場での誘導・雑踏整理 | 81.4% | ○ |
| 3号(運搬警備) | 現金輸送・貴重品運搬 | 6.1% | △ |
| 4号(身辺警護) | 要人警護・ボディガード | 6.5% | △ |
出典:警察庁「令和6年における警備業の概況」(PDF)業者構成比データ
業者シェアを見ると、警備会社の8割超が交通誘導(2号)を、6割超が施設警備(1号)を手がけていることが分かります。一方、運搬警備(3号)と身辺警護(4号)は6%程度しかありません。シニアが現実的に応募できるのは、ほぼ1号と2号に絞られると言っていいでしょう。
1号警備(施設警備)——シニアに最も向く主流の業務
1号警備とは、オフィスビル・商業施設・病院・学校などに常駐して、入退館の管理・巡回・防災設備の監視などを行う仕事です。施設の中にいるため気温差がほとんどなく、体力的なハードルも低めです。シニアにとって最も現実的な選択肢といえます。
施設警備で続いているシニアには、共通点があります。
- 身体を使う仕事に抵抗がない
- 頭で考えたり数字を追う仕事は苦手
- でも稼ぐ必要がある
この3条件が揃った方は、施設警備で長く続く傾向があります。一方で、施設警備だからといって完全に楽というわけではありません。テナント(その施設に入っている店舗や企業)とのコミュニケーションが少なからず求められますし、女性スタッフも増えてきている職場です。
施設警備で不採用になる典型的なパターンは「シフトが合わない」ケースです。介護や通院、家族の事情で夕方以降のシフトに入れない方は、面接でその点を正直に話して、相性の良い物件を担当者に相談したほうがいいでしょう。
2号警備(交通誘導)——体力ストレス耐性が分かれ目
2号警備は、工事現場・イベント会場・道路工事などで、車や歩行者の誘導を行う仕事です。警備会社の8割以上が手がけているため、求人数も非常に多い分野です。
ただし、1号と比べて体力的なハードルが上がります。屋外の仕事なので、夏は暑さ、冬は寒さに直接さらされます。私が以前、警備員として現役で働いていた方々から話を聞くと、夏場の熱中症で倒れた経験を語る人が複数いました。最近はファン付きベストなど装備も改善されていますが、それでも体力ストレス耐性のある方でないと続きません。
「ちょっと具合が悪いと休みたくなる」タイプの方には、正直なところ交通誘導はお勧めできません。逆に、外的なストレスを楽しめる気持ちや責任感がある方は、交通誘導でも長く続いている傾向があります。
3号警備(運搬警備)——シニア未経験では現実的でない
3号警備は、現金輸送車や貴重品の運搬警備です。テレビCMで見かける現金輸送は、これに該当します。
業者シェアが6.1%しかない上、かなりの経験が求められる業務です。万が一の危険度や責任の重さを考えると、シニアの未経験者がこの分野に応募して採用されるのは、現実的ではありません。私自身、説明会や面接の現場で「3号警備をやりたい」というシニア応募者には、ほとんど出会ったことがありません。
4号警備(身辺警護)——相当狭き門
4号警備は、いわゆるボディガードや要人警護です。映画やドラマの影響で「やってみたい」と考える方もいますが、シニア未経験で参入できる分野ではありません。元警察官・元自衛官といった特殊なバックグラウンドが前提になることが多く、業者シェアも6.5%と限定的です。
シニアが警備で仕事を探すなら、1号(施設)と2号(交通誘導)を軸に考えるのが現実的です。3号・4号は「警備にはこういう種類もある」という知識として知っておけば十分でしょう。
なお、警備が「きつい仕事」と言われる理由について、もう少し詳しく知りたい方は、警備員はきついのか——イメージと現実の記事も参考になります。
求人票の「業務の変更の範囲」——2024年4月から義務化された欄を読む
ここからは実務的な話です。警備の求人を見るときに、必ず確認してほしい欄があります。それは「業務の変更の範囲」という欄です。
実は2024年4月の法改正(改正職業安定法施行規則)により、企業が求人票に出す情報のルールが変わりました。雇い入れ直後の業務だけでなく、将来の配置転換の可能性まで明記することが義務化されたのです。
「最初は交通誘導から」と言われたら、何を意味するのか
警備会社の説明会や面接で「うちは最初は交通誘導から始めてもらいます」と言われることがあります。この一言には、いくつかの意味が考えられます。
- その後、施設警備に異動する可能性がある
- 逆に、ずっと交通誘導のままという可能性もある
- 本人の希望で異動させてもらえるのか、会社の都合で配置されるのか
これらは口頭の説明だけでは曖昧になりがちです。だからこそ、求人票の記載を事前に確認することが大切なのです。法改正によって、求人票には次のような形で書かれているはずです。
「変更の範囲」が「警備業務全般」となっていれば、入社後にどの号の警備にも回される可能性があります。「交通誘導のみ」と書かれていれば、配置転換はないということです。同じ求人票でも、この欄の書き方ひとつで将来の働き方が大きく変わります。
面接で配置換えのことを直接聞いていい
求人票だけでは判断がつかない場合は、面接で直接質問しても構いません。「異動や勤務時間の変更はありますか?」と聞くこと自体は、悪い印象を与えるものではありません。むしろ、事前にしっかり確認するシニアの方は、採用担当からも好印象を持たれます。
反対に、何も確認せずに入社して、後から「話が違う」と揉めるケースが昔から後を絶ちません。法改正もそれを防ぐためのものです。せっかく義務化された記載ルールですから、応募する側もこれを活用するべきです。
出典:厚生労働省「令和6年4月より、募集時等に明示すべき事項が追加されます」
応募前に確認すべき3つのこと——「調べもしない」を脱出する
正直に言うと、警備の説明会に来るシニアの多くは事前に何も調べずに来ます。「警備って何となく分かる」というイメージだけで、実際にどんな仕事なのか、自分が何号警備に応募しているのかすら把握していない方も少なくありません。
ここまで読んでくださったあなたは、すでに大半の応募者と差がついています。最後に、応募前に必ず確認しておきたい3つのポイントをまとめます。
◯ 応募前の3つの確認ポイント
- 確認1:自分が応募するのは何号警備か
求人票の業務内容欄を見て、施設警備(1号)なのか、交通誘導(2号)なのかを確認してください。両方を兼務する募集の場合もあります。 - 確認2:配置転換の可能性はあるか
求人票の「業務の変更の範囲」欄を必ず見ましょう。「警備業務全般」となっていれば、施設警備で入っても後で交通誘導に回される可能性があります。 - 確認3:シフトの選択肢はどうか
夜勤の有無、夕方以降のシフト、休日の入り方は、説明会で必ず確認してください。家族の事情で対応できないシフトがある場合は、面接で正直に伝えるべきです。
この3つを確認しておくだけで、入社後のミスマッチは大きく減らせます。逆に言えば、ここを確認せずに入社する方が後を絶たないからこそ、警備業界では「短期間で辞める人」が一定数発生してしまうのです。
まとめ:警備の幅を知ってから応募する
◯ この記事のまとめ
- 警備員の6割以上はシニアで、70歳以上が最大年齢層。「警備=シニアの仕事」と言ってもいい構造
- シニアが警備に流れるには、PCが苦手な層・夜勤経験者・選択肢が絞られた層という3つの経路がある
- 4業務のうちシニアの現実的な選択肢は1号(施設)と2号(交通誘導)。3号・4号は経験者前提
- 採用担当が見るのは資格や体力ではなく、挨拶・笑顔・心配りという人間性
- 2024年4月の法改正で求人票に「業務の変更の範囲」が必ず記載されるようになった。これを必ず確認する
警備という仕事は、思っている以上に幅の広い仕事です。施設の中で穏やかに働く方もいれば、夏の炎天下で交通誘導をする方もいます。同じ「警備員」という肩書でも、現場の実態はまったく違います。
だからこそ、応募する前に仕事内容をどれだけ事前に知れるかが、その後の働き心地を大きく左右します。求人を見て「これはどんな仕事だろう」と想像する。説明会で「具体的に何をするのか、何がきつくて何が楽しいのか」を質問する。そういう一手間が、シニアの仕事選びでは決定的に大切です。
シニア向けの警備員求人をお探しの方へ
施設警備か交通誘導か、どちらの業務に応募するかが見えてきたら、複数社の求人を比較して「業務の変更の範囲」の欄を確認してください。記載がきちんとしている会社を選ぶことが、入社後のミスマッチを防ぐ最初の一歩です。
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