「警備員に向いているのはどんな人ですか」——シニアの求職者からよく受ける質問です。体力があるかどうか、性格が温厚かどうか、で答えてしまうと答え方を誤ります。
私は採用担当として、警備の現場を経験した方や元警備員、現役の警備員と多く向き合ってきました。そこで見えてきたのは、向き不向きを決めるのは「続けられるかどうか」だということです。警備業界は離職率が高く、入って数ヶ月で辞めていく方も少なくありません。この記事では、続く人・辞める人それぞれに共通する4つの特徴を、現場の話と一緒に正直にお伝えします。
警備業界は「向いていない人がすぐ辞める」業界
本題に入る前に、まず業界の前提条件を共有させてください。警備員に向いているかどうかを考えるとき、警備業界の離職率の高さを知っておくと、判断軸が変わります。
公的データで見る警備業界の定着率
- 警備員の平均勤続年数:9.5年(全業界平均は約12年)
- 警備業(保安)の有効求人倍率:6.58倍(全業種平均1.45倍)
- 警備員の約8割が1年更新の有期雇用
出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」「一般職業紹介状況」
業界事例として、リクルートワークス研究所の取材記事には「ある警備会社では1年間に2,300名を採用したが、その年のうちに1,800名が退職した」という話が紹介されています。極端な例ですが、警備業界の定着の難しさを物語る数字です。
つまり、警備員に「向いていない人」は、業界が長年かけて何百万人という単位で篩(ふるい)にかけてきました。残った人たちには共通点があるし、抜けていく人たちにも共通点がある。それを順番に見ていきます。
警備員として続く人——4つの共通点
まず、現役で長く警備員を続けている方の共通点を、私が直接話を聞いてきた範囲でお伝えします。年齢や体力よりも、考え方と姿勢の話が中心になります。
1. 明確な「働く理由」を持っている
続く人に共通する最大の特徴は、自分なりの「働く理由」が言葉にできることです。家計を支える、年金だけでは足りない補填、孫の進学資金を貯めたい、健康のため——理由は人それぞれですが、必ずあります。
逆に「定年したから、なんとなく」「家にいても退屈だから」だけで応募してきた方は、現場の最初の壁(夏の暑さ、冬の寒さ、立ちっぱなしの足の痛み)でモチベーションが切れます。続ける動機が薄いと、踏ん張れないのです。
2. 感謝が直接届く対面仕事を喜べる
警備員の現場には、コールセンターや事務職にはない瞬間があります。子供が笑顔で手を振ってくれる、「暑い中ご苦労様です」と通行人から声をかけられる、商業施設の利用客が会釈してくれる。こうした小さな感謝を「ありがたい」と素直に受け取れる方は、警備員として続きます。
私が話を聞いてきた現役警備員の方々は、決まってこのエピソードを口にしました。コールセンターで長年働いてきた方が警備員になると、「対面の仕事はやりがいの届き方が違う」と言うほどです。
3. 「写し鏡」を理解している
これは私が現役警備員から聞いた話の中で、いちばん心に残ったものです。続く人は「自分が人にできているかどうか」が、巡り巡って自分に返ってくることを知っています。
自分から先に挨拶する人には、相手から挨拶が返ってくる。相手の安全を気遣う声かけをする人には、感謝が返ってくる。こうした「写し鏡」の構造を体で理解している方は、警備員の現場でストレスをためずに済みます。一方で「あの住人は挨拶を返さない」「子供がうるさい」と矢印が外に向く人は、続きません。
4. 体の丈夫さと健康管理を当たり前にできる
これは前提条件です。警備員は屋外・屋内を問わず立ち仕事が中心で、シフトも一般職に比べて不規則になることがあります。体力的に大丈夫か、というよりも、自分の体調を毎日管理して仕事に穴を空けない、という意識が当たり前になっている方が続きます。
とくにシニア世代では、健康診断を毎年欠かさない、持病があれば薬を切らさない、夏場は水分補給を意識する、こうした基本動作が「言われなくてもできる」ことが、続く人と辞める人を分けます。
FIG.1 警備員として長く続く人の4つの共通点
警備員として辞めていく人——4つの共通点
続いて、入って数ヶ月から1年以内に辞めていく方の共通点を、同じく現場で見てきた範囲でお伝えします。続く人の裏返しになっている部分もありますが、独立した特徴もあります。
1. 「年齢をたてにした甘え」が出る
これはシニア採用全般で見てきたパターンですが、警備員の現場では特に顕著です。「もう年だから」「この年でこれは厳しい」と、年齢を理由にできない・やらないを正当化する方は、長く続きません。
もちろん本当に体が動かない、健康上の限界があるなら、無理は禁物です。けれど、シフトを守る、挨拶をする、報告連絡相談をする、こうした基本動作まで「年齢」を理由にできなくなる方は、現場でも煙たがられます。これは私が説明会の控室で警備会社の担当者から直接聞いた話でもあります。
2. 諦め癖がある
新しい現場、新しい人間関係、覚えなければいけない手順——警備員の最初の数ヶ月は、想像以上に覚えることがあります。研修だけで20時間以上、現場に出てからも各施設のルールを身につける必要があります。
この最初の壁で「自分には無理だ」「もう覚えられない」と早めに諦めてしまう方は、辞めていきます。逆に「分からないことは聞きながら、少しずつ覚えていこう」と腰を据えられる方は、3ヶ月もすれば現場に馴染んでいきます。
3. 「ちょっと具合悪いと休みたくなる」
これは私が現役警備員から直接聞いた、強い言葉です。警備の現場は人手不足が常態化していて、一人欠けると現場全体が回らなくなる構造があります。だからこそ「ちょっと体調が悪いから今日は休もう」が癖になっている方は、警備員には向きません。
もちろん本当に体調が悪いときは休むべきです。けれど、続く人は「休むかどうか」を判断する基準が高く、辞めていく人は基準が低い。この差は、数ヶ月もすると勤怠記録に明確に表れてきます。
4. 働く理由が薄い、または曖昧
続く人の1番目の裏返しです。「定年したから」「家にいても退屈だから」「なんとなく募集を見たから」だけで応募してきた方は、現場のしんどさを乗り越える理由がありません。最初の壁が来た瞬間に、続ける理由を見失います。
面接で「なぜ警備員を選んだのですか」と聞かれて、自分の言葉で1分以上話せない方は、応募前に一度立ち止まったほうがいい。これは厳しい言い方ですが、続けるための土台が薄いと、お互いにとって不幸な結果になります。
FIG.2 警備員として辞めていく人の4つの共通点
「向いていない」と感じたら——別の道もある
ここまで読んで「自分は続く人ではないかもしれない」と感じた方もいるかもしれません。それは前向きな気づきです。警備員に向いていないと自覚することは、自分を否定することではなく、別の選択肢に視野を広げる第一歩です。
私が面接で実際に聞いた話で印象的なものがあります。ある男性は警備員として数年働いた後、安定したシフトで働ける別の仕事に転職しました。彼が言うには、「警備の仕事は休みを入れながらやらないときついから、生活リズムが整わない。シフトが安定する仕事に変えたら、結果的に稼ぎがよくなった」。これは負け犬の話ではなく、自分に合う仕事を選び直したという話です。
「向いている人」になるための心構え
最後に、警備員を志しているけれど「自分が向いている人なのか分からない」と迷っている方へ、心構えのアドバイスをいくつかお伝えします。
面接前にもう一度考えたい4つの質問
- 自分が警備員になりたい「理由」を、1分以上自分の言葉で話せるか
- 子供から笑顔で手を振られたとき、「ありがたい」と素直に感じられるか
- 相手が挨拶を返してくれなくても、自分から挨拶を続けられるか
- 体調管理を毎日続けて、勤怠に穴を空けない自信があるか
すべてに胸を張って「はい」と答えられる方は、警備員に向いている可能性が高いです。逆に1つでも引っかかる項目があれば、その点を補強してから応募するか、別の仕事も視野に入れて検討してみてください。
警備員はきつい仕事です。けれど、続けている方には共通して「やってよかった」と感じる瞬間があります。続けるかどうか、自分で決めるための材料として、この記事が役立てば嬉しいです。警備の仕事内容や面接のリアルについては、警備員はきついのか——採用担当が見てきた『続く人と辞める人』の差や警備員の面接——採用担当が見ている合否の分かれ目もあわせて参考にしてみてください。
まとめ——向き不向きは「続けられるか」で決まる
この記事のまとめ
- 警備員に向いているかは、性格や体力ではなく「続けられるか」で決まる
- 警備業界の平均勤続年数は9.5年(全業界平均12年)、定着率は低い業界
- 続く人の共通点は、明確な働く理由・対面の喜び・写し鏡の理解・健康管理
- 辞める人の共通点は、年齢の甘え・諦め癖・休み癖・働く理由が薄い
- 「向いていない」と感じたら、別の仕事に切り替える選択肢もある
- 面接前に自分自身に4つの質問を投げて、納得してから応募したい
警備員は、シニアの仕事として続けやすい部分と、続けにくい部分が混在しています。年齢や体力で判断するのではなく、自分の中に続けるための土台があるかを、応募前に一度確認してみてください。続けられる仕事に就くことが、シニアの仕事選びでいちばん大事な視点です。
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