コールセンターの求人を見ていると、「時給1,500円」「時給1,800円」と幅があって、どれが自分に合うのかわからない——そんな声をよく聞きます。
採用担当として数百名のシニアスタッフと向き合ってきた経験から、時給の本当の相場と、高時給求人に潜むリスク、そして「本当にその時給が必要ですか?」という問いまで、正直にお伝えします。
コールセンターの時給相場——業務別・地域別で見ると全然違う
コールセンターの時給は「だいたい1,500円くらい」というイメージを持っている方が多いです。しかし実際には、業務の種類や地域によってかなりの幅があります。「時給1,500円」という数字だけで判断すると、入社後に想定と違うと感じる原因になります。
受電(インバウンド)の時給
受電業務は、お客様からかかってくる電話を受ける仕事です。医療・金融・法律など専門知識が必要な案件は時給が高く、一般的なお問い合わせ対応は標準的な時給帯になります。
発信(アウトバウンド)の時給——インセンティブ次第で大きく変わる
発信業務はお客様に電話をかける仕事です。基本時給は受電より低めに設定されているケースが多いですが、成果に応じてインセンティブが上乗せされる設計が多く、実力次第で収入が大きく変わります。通販商品の案内など生活に身近な商品は購買率が高い分、時給は低めに設定されていることが多いです。
在宅コールセンターの時給
在宅コールセンターの時給は、セキュリティ要件や業務内容によって条件が大きく異なります。在宅勤務の詳しい条件と時給については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ 在宅コールセンターで働くシニアのリアル【採用担当が解説】
| 業務種別 | 全国目安 | 都市部目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 受電・専門性高(医療・金融など) | 1,400〜1,700円 | 1,600〜2,000円+ | 専門知識が必要・安定している |
| 受電・一般(お問い合わせ対応) | 1,200〜1,500円 | 1,400〜1,700円 | 未経験歓迎が多い・シニア向き |
| 発信・インセンティブあり | 1,100〜1,400円+インセン | 1,200〜1,600円+インセン | 実力次第で高収入も可 |
| 発信・通販系 | 1,000〜1,300円 | 1,200〜1,500円 | 安定しているが上限低め |
| 在宅コールセンター | 条件による(記事008参照) | セキュリティ・環境要件あり | |
※全国平均約1,500円・東京都1,650〜1,720円台(Indeed調べ・目安)。インセンティブは含まず。
「高時給求人」は本当にお得なのか?採用担当が教えるリスク
保証時給の仕組みと「蓋を開けたら違う」の実態
ここからは、大きな声では言いにくい話をします。採用担当として見てきたからこそ、正直にお伝えしたいことです。
高時給で求人を出しているコールセンターの中には、入社時は高い保証時給を提示しながら、一定期間後に成果が出なければ時給が下がる設計になっているケースがあります。特に不用品買取や車買取など、成果報酬型の案件に多い構造です。
時給を一方的に下げることは「不利益変更」にあたり、労働者の同意なく行うことは原則禁止されています(労働契約法第9条)。インセンティブ設計の変更という形で実質的な収入減になるケースには注意が必要です。
参考:厚生労働省「労働条件の引き下げ(裁判例)」
こんな求人は注意して見てほしい
高時給で常時募集している小規模センターのリスク
以下が重なる求人は、入社後の条件変更リスクがある可能性があります。慎重に確認してください。
・時給が相場より200円以上高い
・常時募集が続いている
・会社規模が小さい(大手上場企業ではない)
・成果報酬・インセンティブの比重が高い
これらが複数重なる場合は、応募前に「基本時給」と「インセンティブの条件」を必ず確認しましょう。
大手コールセンターのメリットと、シニアが知っておくべき現実
大手のコールセンターは、常に案件を抱えていて採用も安定しています。倒産リスクが低く、労務管理もしっかりしていることが多い。ただし、シフト管理や業務連絡がスマートフォンアプリや管理ツールを活用したデジタル化で運用されているケースが増えています。ITへの抵抗感が少ない方、アプリやツールをある程度使いこなせる方が活躍しやすい環境です。また、大手は人の出入りが多く、業務の変化も早いため、その点も理解した上で応募することをお勧めします。
派遣経由で入る選択肢——時給は損しない
大手コールセンターへの入り口として、派遣会社経由という選択肢があります。派遣会社が間に入ってフォローしてくれるため、初めての職場でも安心感があります。
◯ 「派遣だから時給が低い」は間違い
同一労働同一賃金のルールにより、同じ業務であれば雇用形態にかかわらず均等な待遇が義務付けられています。派遣だからといって時給が不当に低くなることは、法律上認められていません。
参考:厚生労働省「派遣労働者の同一労働同一賃金について」
時給交渉できる?——採用担当が答える現実
面接時の時給交渉はほぼ難しい
「面接のときに時給交渉できますか?」という質問をよく受けます。結論から言うと、面接段階での時給交渉はほぼ難しいです。どこの会社も時給は規定で決まっており、採用担当一人の判断で変えられるものではありません。
入社後に時給を上げる唯一の方法
入社後に時給を上げたい場合は、結果を出すしかありません。もっと時給が欲しいという意志があるなら、インセンティブが高い案件で誰よりも結果を出す気持ちで挑戦してください。それが唯一の現実的な道です。
年金受給者が「稼ぎすぎ」で困るケースとは
年金をもらいながら働く方に、ひとつ知っておいてほしいことがあります。一定以上の収入があると、税金や社会保険の扱いが変わる場合があります。「もっと時給の高い仕事を」と思う前に、月にいくら稼ぐ必要があるのかを先に計算することが大切です。
◯ 月収を逆算してから仕事を選ぶ
たとえば「月に8万円あれば十分」という方なら、時給1,200円で週5日・4時間勤務(月約20日)で達成できます。高時給にこだわる前に、自分に必要な月収を計算してみてください。稼ぎすぎると税金面で別の悩みが生まれるケースもあります。ご自身の年金・扶養の状況に合わせてご確認ください。
あなたはどちらのタイプ?——目的で選ぶ仕事の種類が変わる
コールセンターで長く続く人と、早期に離職してしまう人の差は、時給の高低よりも「何のために働くか」が明確かどうかにあります。
| 項目 | 稼ぐ目的型 | ライフスタイル型 |
|---|---|---|
| 目的 | 月収・時給の最大化 | 居場所・生きがい・社会参加 |
| 向いている業務 | インセンティブ型の発信業務 | 受電・安定した一般対応 |
| 時給の考え方 | 必要な月収から逆算して選ぶ | 時給より居心地・業務内容を優先 |
| 定着率 | 目標収入が達成できれば高い | 環境が合えば長く続く傾向あり |
| 注意点 | 目標未達だとWワークや転職を検討し始める | 時給だけで選ぶとミスマッチになる |
逆に、居場所や生きがい、第2の人生として新たなライフスタイルを求めている方は時給以外の居心地や業務内容で選んだ方がいいです。そういう人は本当に長く仕事を続けられます。年金とバランスを取りながら、充実した私生活と仕事の両立を目指してください。
どちらが正解ということはありません。大切なのは「自分はどちらのタイプか」を正直に決めてから求人を選ぶことです。目的が決まれば、選ぶべき職場が見えてきます。
◯ この記事のまとめ
- コールセンターの時給は業務の種類・地域・インセンティブ設計で大きく異なる。「1,500円」という数字だけで選ばない
- 高時給で常時募集している小規模センターには注意。保証時給の仕組みと実態を確認する
- 時給を下げることは原則法律上の不利益変更にあたる(労働契約法第9条)。インセンティブ設計での実質的な収入減に注意
- 派遣だから時給が低いということはない。同一労働同一賃金のルールが適用される
- まず「月にいくら必要か」を逆算してから求人を選ぶ。年金受給者は稼ぎすぎによる税金・年金への影響も確認を
- 稼ぐ目的型はインセンティブ型を、ライフスタイル型は居心地・業務内容で選ぶ
もしそれでも「稼ぐ必要がある」という方へ、採用担当から正直に伝えます。安易に妥協して決めないでください。本当にその時給が必要であれば、10社・20社、本気で応募してください。仕事を選り好みしないでください。大変な状況かもしれませんが、必ず道は開けます。応援しています。
よくある質問
時給1,000円台と1,500円台の仕事、どちらを選ぶべきですか?
単純に高い方を選ぶのではなく、業務内容と自分のスキルを照らし合わせることが大切です。時給1,500円以上の業務は専門知識や高いコミュニケーション能力が求められることが多く、未経験のシニアには負荷が高い場合があります。最初は時給1,200〜1,300円台の一般的な受電業務から始め、慣れてきてからステップアップする方が、長く続けられるケースが多いです。
インセンティブ型の仕事は稼げますか?
案件と個人の適性次第です。話すことが得意で、断られてもめげない精神的な強さがある方には向いています。ただし、基本時給が低く設定されていることが多いため、インセンティブが取れない月は収入が安定しません。「頑張れば稼げる」という点では魅力的ですが、安定収入を求める方には受電業務の方が向いています。
派遣と直接雇用、どちらが時給は高いですか?
同一労働同一賃金のルールにより、同じ業務であれば雇用形態による時給の差は基本的に生じないことになっています。むしろ派遣会社経由だと派遣会社のサポートが受けられるメリットがあります。初めてコールセンターに挑戦する場合は、派遣経由で入った方がフォロー体制が整っていて安心できるケースもあります。
年金をもらいながら働く場合、いくらまで稼いでいいですか?
年金の種類(老齢年金・障害年金など)や受給額、雇用形態によって異なります。在職老齢年金の仕組みにより、一定以上の収入があると年金の一部または全部が支給停止になる場合があります。また、扶養の有無によっても103万円・130万円の壁が関係します。ご自身の状況を日本年金機構や社会保険労務士に確認することをお勧めします。


「時給1,500円」という数字だけで比べるのではなく、何の業務に対する時給なのかを確認することが大切です。